プレミアムが30%以上ついたTOB案件の共通点

 TOBを成立させやすくするため、TOBでの株式買付価格は市場株価よりも高めに設定されることが一般的です。このとき通常の株価に上乗せされる金額が「プレミアム」。

 プレミアムの金額は案件によって異なりますが、おおむね30%前後が目安になります。投資家から見て、このプレミアムの大きさが利益に直結します。

 2020年4月から2021年にかけて行われたTOBは計72件。そのうちTOBで30%以上のプレミアムがついたのは計38件でした。これらの30%以上のプレミアムが付いたTOBには、どのような共通点があるのでしょうか?この38事例に見られる特徴を紹介します。

1.当初からTOB対象企業の株式を過半数近く保有

 1つ目は、買主がTOB対象企業の株式を過半数以上保有していることです。このうちTOB実施前の持分比率が40%超だった案件は、15件ありました。買主が売主に対して、TOB前から大きな影響力を持っていたと推測できます。

2.親子上場の解消

 2つ目は、親子上場の解消によるものです。1つ目の条件に当てはまる15件のうち、親子上場の解消に伴うTOBは7件でした。

 親子上場企業は、たびたびコーポレートガバナンス上の課題が指摘されており、2006年の417社をピークにその数は減少に転じています(数値は野村資本市場研究所「純減が続く親子上場企業数」より引用)。

 コロナ禍での業績への影響によっては、今後も親子上場の解消とともにTOBが実施される可能性はあるでしょう。

3.PBR倍率が1倍を切っている

 3つ目は、PBR(株価純資産倍率)が1倍を切っている案件が多いことです。PBRは株価が割安かどうかを測る指標で、「株価 ÷ 1株当たりの純資産額」から算出されます。

 このPBRが1倍を切っているということは、本来の企業価値よりも株価が割安になっている状態です。プレミアムを上乗せすることもあり、なるべくコストを抑えたいということでしょう。

4.TOBをするだけの体力がある

 4つ目は、買主側にTOBできる体力があることです。親子上場を解消する際の親会社側も含め、売主側の時価総額に対して対価を支払えるだけの財政基盤は必要不可欠。加えて業績も比較的安定していることが特徴です。