3)映画

 前4Qは、売上高2,002億円(前年比39.2%減)、営業利益18億円(同92.2%減)となりました。新型コロナ禍による劇場公開作品の大幅減や、テレビ番組の制作、納入の遅れなどにより、大幅減収減益となりました。

 今期会社予想は、売上高1兆1,400億円(同50.2%増)、営業利益830億円(同3.1%増)です。6月以降、「Peter Rabbit」「Hotel Transylvania」などソニーのヒット作の続編をアメリカで劇場公開する予定です。このため、今期は大幅増収になる見込みであり、広告費の増加を増収で吸収し、小幅ですが増益が予想されます。

 映画分野はソニーが弱い分野ですが、力のある配信業者が増えており、コンテンツの売り先が増えています。ネットフリックス、ディズニーと2022年以降に劇場公開するソニー作品のアメリカ国内の配信権契約を良好な条件で結びました。

 今後の映画分野の展開に期待したいと思います。

4)エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション(EP&S)

 前4Qは、売上高4,352億円(前年比19.8%増)、営業損失115億円(前年同期は595億円の赤字)となりました。1-3月期は通常不需要期なので、赤字となりました。

 このうちモバイル・コミュニケーション(大半がスマホ事業)の営業赤字は141億円(前年同期は297億円の赤字)なので、モバイル・コミュニケーションを除く事業は前4Qは黒字となりました。テレビは大型4Kテレビ中心の製品構成にしたため、2021年3月期通期で採算が改善しました。高級一眼カメラは、前1Qは赤字でしたが、前2Qから黒字化しました。

 今期会社予想は、売上高2兆2,600億円(同9.4%増)、営業利益1,480億円(同10.4%増)です。スマートフォンは事業範囲を国内中心にしたため、黒字が続くと予想されます。テレビ、カメラは需要が堅調であり、これらの事業も黒字が続くと思われます。

5)イメージング&センシング・ソリューション

 前4Qは、売上高2,323億円(前年比0.5%増)、営業利益202億円(同41.4%減)となりました。

 これまで大判の高級イメージセンサをスマホ用に積極的に購入していた大口顧客(ファーウェイと思われる)の購入が、スマホシェアの低下によって減少しました。他のスマホメーカー向けは増えていますが、北米向けも含めて製品構成が悪化しています(採算が良い大判イメージセンサが以前ほど売れていない)。また、サムスンとの販売競争もあるようです。積極的な設備投資と研究開発の負担もあります。

 ただし、今期会社予想は売上高1兆1,300億円(同11.6%増)、営業利益1,400億円(同4.0%減)ですが、5Gスマホの販売増加を考慮すると上方修正の可能性があります。楽天証券予想は、売上高1兆2,000億円(同18.5%増)、営業利益1,550億円(同6.2%増)です。

6)金融

 前4Qは、金融ビジネス収入4,229億円(前年比2.3倍)、営業利益271億円(同2.2倍)となりました。1年前の前々4Qは新型コロナ禍の中での運用難と保険販売の低迷で業績が落ち込みましたが、前4Qはこの反動とソニー生命の特別勘定運用益の増加等が寄与しました。

 今期会社予想は、金融ビジネス収入1兆4000億円(同16.1%減)、営業利益1700億円(同3.3%増)です。ソニー生命の特別勘定運用益の増加を見込んでいないこと、今期から全社決算が米国会計基準から国際会計基準に移行するため、金融分野における市況変動による収益増減の一部が損益計算書に計上されなくなることなどにより、二ケタ減収となる見込みですが、営業利益は横ばいが予想されます。

 今後も安定成長が期待できます。

3.2022年3月期、2023年3月期楽天証券業績予想を下方修正する

 2022年3月期会社予想は、売上高9兆7,000億円(前年比7.8%増)、営業利益9,300億円(同4.3%減)です。これに対して楽天証券では、売上高9兆8,000億円(同8.9%増)、営業利益9,600億円(同1.2%減)と予想します。ゲーム&ネットワークサービス、音楽、イメージング&センシング・ソリューションで上方修正余地があると考えます。

 また2023年3月期は、楽天証券では売上高10兆3,500億円(同5.6%増)、営業利益1兆600億円(同10.4%増)と予想します。ゲーム&ネットワークサービスでPS5が収益の中核となりこの事業を牽引するようになると思われます。また、映画、イメージング&センシング・ソリューションが緩やかに成長すると予想します。

 ただし、前回予想(2022年3月期営業利益1兆600億円、2023年3月期1兆2,600億円)のようなPS5が牽引する高成長シナリオは、半導体不足とソニーの能力不足によって実現できないと思われます。

4.今後6~12カ月間の目標株価を、前回の1万6,000円から1万3,000円に引き下げる

 ソニーの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の1万6,000円から1万3,000円に引き下げます。2023年3月期の楽天証券予想EPS 623.8円に一定の成長性を考慮した想定PER20~25倍を当てはめました。

 中長期で一定の投資妙味があると思われます。