FRBの出口戦略が焦点に
以上の話はあくまで計算上の話ですが、マーケットでは、8月のジャクソンホール会議でテーパリングの検討に着手し、2021年の終わりから2022年初めに資産購入減が始まるとの予想が多いようです。政策金利も、FRBの2023年末までゼロ金利継続との方針に対して、マーケットではインフレを警戒し、2022年終盤の利上げが織り込まれつつあります。
雇用統計の発表前には、6月にもテーパリングの検討が始まるのではないかとの見方が浮上していましたが、今回の雇用統計でその見方は後退しました。それでも消えてはいないようです。
今後の相場シナリオを想定する際に、FRBの金融政策の変更、すなわち出口戦略が焦点になるのは間違いありません。出口政策に動き始めたカナダドルや、出口戦略を検討し始めているポンドが買われているように、ドルもFRBの出口戦略が動き始めたら本格的に買われるかもしれません。しかし、出口戦略が雇用情勢に左右されるということにも留意しておく必要があります。
物価よりも雇用を重視しているFRBが、雇用の回復を睨みながら、どのタイミングでテーパリングや利上げの時期を言及し始めるのかが今後の注目ポイントとなります。
ドル/円は、雇用統計のネガティブサプライズによって売られましたが、ネガティブサプライズの割には108円が割れるほどの急落ではありませんでした。テーパリング観測後退によってドル全面安となったため、ユーロやポンド、豪ドルは上昇し、それらの通貨のクロス円も上昇(円安)したことが、ドル/円の円高にブレーキがかかったようです。
例えば、スイス/円は6年振りの高値、カナダ円も元円も3年振り、ユーロ/円や豪ドル/円も3年振りの高値となっているため、ドル/円が円高に行きにくくなっているのも仕方のないことかもしれません。そうは言ってもドル/円の頭は重たくなってきています。しばらくは、ドル/円の頭の重たさとクロス円の上昇の綱引き相場が続くかもしれません。