働いたら負け?失業手当>給料の構図も

 例えば、モンタナ州の場合、1人当たりの州の失業給付最大572ドルに加えて、連邦政府の追加失業手当300ドルにより、働かなくても毎月3,488ドル(約38万円)を受け取ることができるとのことです。前年の所得が4万2千ドル未満(3,488ドル×12カ月、約455万円)の層は、働くよりも失業手当を受け取る方が得となる計算になります。

 バイデン米大統領は、7月4日の米国の独立記念日を“コロナからの独立記念日”として位置付け、7月4日までに成人の70%の、1回の接種完了という目標を掲げましたが、仮に70%接種となっても労働者が戻るのは、追加失業手当が切れる10月以降となるかもしれません。

 新型コロナのパンデミックで失われた雇用は、昨年5月以降急速に回復してきましたが、それでも未だ約840万人喪失しています。リーマンショックの時には約870万人の雇用が喪失し、FRBが金融緩和から政策変更に動き出したのは、雇用喪失が250万人にまで回復してきた時点でテーパリングに言及したといわれています。それに当てはめると、今回、テーパリングに言及するには約840万人の雇用喪失が約600万人回復する必要があります。月平均で60万人回復して10カ月かかる計算になります。直近2カ月の3カ月平均雇用者数50万人だと、1年かかる計算になるため、テーパリングへの言及は来年の春か夏前ということになります。

 失業手当延長がなくなる10月以降に雇用回復が加速すれば、テーパリングへの言及時期は前倒しになるかもしれませんが、今年の年末にテーパリング開始となると、月100万人以上の雇用が回復していく必要があります。雇用回復ペースの観点からみると、年内テーパリング開始のシナリオは難しいかもしれません。