32%もの高い確率で実質的なマイナス!やっぱり怖いのは預金の「実質価値」の低下

 臼杵氏が確定拠出年金の時の議論においても指摘していたのは、預貯金のみの資産管理は額面上の損失はないとしても、実質価値に「損失」が起きる可能性がある、ということでした。

 そのため、日本でもデフォルト商品は投資信託を設定するほうが望ましいと議論をしたわけです。私も同委員会の委員を務めていたので議論をよく覚えています。

 今回の試算でも20年の積み立てを行った試算で、もう一つ重要なデータを示しています。それは「額面」だけではなく「実質的な価値」の変動を、定期預金についても検証したものです。

 確かに定期預金は元本割れをしません。今はもう銀行の破綻も考えにくい情勢にあるので、ペイオフの心配もずいぶん後退しました。しかし、インフレに金利が追いついているかは別です。

 定期預金を20年続けた試算によれば、なんと32%もの高い確率で実質的なマイナスが発生しているとしています。

 私たちが持っている「定期預金は安全だ」というイメージは強いものがありますが、データを提示されると「実質元本割れ」の確率はかなり高いと感じるのではないでしょうか。額面こそ守られていると思っていたら、3回に1回は資産価値が目減りしたことになるわけですから。

 物価との見合いで実質的価値を意識するのはなかなか簡単ではありません。しかし、「預金」が安全である、ということは、実は盤石な話ではないわけです。

 なお、「それらは過去のデータの結果に過ぎない」という意見もあり、それはそれでその通りです。

 過去は未来を保障するものではありません(日本株のリスク・リターンのバランスは将来マシになるかもしれないし、定期預金の金利の物価上昇を上回る時期が増えるかもしれない)。

 時代と社会の変化も無視することはできません。とはいえ、過去のデータから教訓や可能性を学んでいくことは有用ではないでしょうか。