10%未満のワクチン接種率でも経済が活性化する現状

 さて、中国では、5月1日から5日まで「五・一黄金周」に入ります。中国の知人にこの期間の予定について話を聞きましたが、国内に住む多くが「家族で国内旅行へ行く」と意気込んでいます。湖北省在住の女性(40代)は、家族や兄弟と上海市と杭州市に旅行に出かける予定のようで、「高速鉄道の切符が予約しにくい」「上海のホテルがものすごく高い」といった不満をぶつけてきました。

 ゴールデンウイーク期間中の旅行者数は、史上最大規模に上り、5日間でのべ2億人を突破するという試算もあるほどです。香港に上場するシートリップ社(9961、HKG)が発表した予測報告によれば、この期間の人気都市トップ10は、上から順に、上海、北京、三亜、広州、成都、重慶、西安、アモイ、杭州、深センと、地域的にも各地にばらついている感があります(観光地のトップは上海のディズニーランド)。

 比較対象になると思われるのが、この前の清明節連休(4月3~5日)です。この期間、国内旅行者数はのべ1.02億人で、コロナ前の同時期の94.5%まで回復したと、劉報道官が会見で紹介しています。

 私が見る限り、中国国内では、仕事、休日、連休中の外出を含め、もはやコロナ前の「日常」に戻ったという様相を呈しています。中国政府としては、引き続き入国管理を強化することで、ウイルスの逆輸入を断固防ぎ、仮に国内でクラスターが発生した場合には、地域を限定してロックダウンをかけつつ、人の移動を含めた経済活動を活性化させていこうということなのでしょう。

 中国政府の発表によれば、4月25日時点において、コロナワクチン接種の回数は2.2億となっています。一人2回接種すると考えても、その普及率はいまだ人口の10%にも達していません。

 中国の官製メディア『光明日報』が、ワクチン接種回数が1億を超えたあたり、4月7日に発表した論考によれば、ワクチン接種が始まって以来、1日で最も接種人数が多かったのが3月26日ののべ611.9万人で、「中国で新型コロナウイルスに対する集団免疫を実現するためには、ワクチン接種率を70~80%、すなわち9億~10億人にまで高める必要がある。このように見ると、仮に3月26日のペースで接種人数が増加していったとしても、この目標に到達するのは来年の上半期ということになる」と指摘した上で、いまだ道半ばという現状を記載しています。

 興味深いのは、ワクチン接種率が、他国と比べても決して高くない状況にもかかわらず、中国ではコロナ感染者数が抑制されており、前述のように、経済活動がコロナ前の状況にまで回復しつつあるという点です。換言すれば、コロナ抑制→経済再生の過程で依拠したのはワクチンではないということ。これからの1年、仮にワクチン接種率が集団免疫を実現できるまで高まったとして、中国経済がどんな展開を見せるのか。注意してみていきたいと思います。

 コロナ抑制、経済再生、ワクチン接種。すべての分野でいまだ困難な状況にある日本にとっても参考になるかもしれません。