日米共同宣言で円高?!

 米長期金利の低下で下落したドル/円は、108円台後半で一旦踏み止まりましたが、今週明けから再び円高が進行しました。その背景は、東アジアの地政学リスクの高まりにあるようです。

 4月16日にワシントンで開催された日米首脳会談での共同声明では、52年振りに台湾問題について言及されました。「台湾海峡の平和と安定の重要性」が強調されたことから、東アジアの地政学リスクが高まり、リスク回避の円買い予想から、今週19日早朝からドル/円の上値が重い展開が続いています。しかし、台湾海峡有事の際は、日本も協力を求められ、沖縄を中心に日本が巻き込まれる可能性が高いことが予想されます。そのため、一概に円買いとの判断にはなかなかなれない側面もあります。

 また、有事が起こらなくても緊張が高まった状態が続き、中国による経済面での報復措置も予想されます。尖閣諸島問題を契機とした中国による2010年のレアアース禁輸措置や2012年の日本製品不買運動など日中の経済関係に影響が及ぶ可能性が高まることも予想されます。

 19日に財務省が発表した2020年度の貿易統計によると、輸出額に占める米国向け比率は17.9%に対し、中国向けの比率は22.9%となっています。近年は米国とほぼ同水準でしたが、2020年度は遂に米国を抜きました。日中貿易は日米貿易よりも比重が高まっていることから、中国との経済関係悪化は日本の経済回復に大きな影響が出てくることになります。

 他の先進国に比べてワクチン摂取率が極めて低い日本にとっては欧米に比べて経済回復が遅くなることが予想され、これに日中経済関係の悪化が加われば、回復は更に遅くなることが予想されるため、円売り材料になりかねません。従って日米共同宣言は円高との見方には単純に踏み込めない面もあることにも留意する必要があります。ただ、今のところ中国は日米に対する批判は抑制しているようです。