エヌビディア
1.2022年1月期1Q業績は会社側ガイダンスを上回りそう
2021年4月12日、エヌビディアはインベスター・デイをオンラインで開催しましたが、それに合わせて2022年1月期1Q(2021年2-4月期、以下今1Q)業績ガイダンスのアップデートを行いました(プレスリリースを発表)。
それによれば、今1Qの売上高は当初会社予想の53億ドル(前年比72.1%増)を上回る見込みです。エヌビディアのセグメントである、ゲーミング、データセンター、プロフェショナル映像、自動車、OEMその他の全セグメントの売上高が会社予想を上回って推移しているもようです。特にデータセンター向け製品の勢いが強く、クラウドサービス業者向けにAI駆動用GPUが増加しています。
また、大規模ネットワークの管理システムである「EGXプラットフォーム」の勢いも強く、今下期にはこの動きが企業向け、エッジコンピューティング向けのビジネスの拡大に繋がると予想されます。
加えて、暗号資産のマイニング用に今年2月に発売された「CMP HX」シリーズの今1Qの売上高見通しを期初の5,000万ドルから1億5,000万ドルに上方修正しました。
表3 エヌビディアの業績
表4 エヌビディアの市場別売上高(年度)
表5 エヌビディアの市場別売上高(四半期)
2.アームと連携し大型AIシステム向けハイエンドCPUに進出する
2021年4月12日開催のインベスター・デイにおいて、エヌビディアは大型AIシステムを駆動するCPU「Grace(グレイス)」(性能は今の同じ目的のCPUの10倍)を発表しました。エヌビディアが現在買収作業中のアームのアーキテクチャーを使った低消費電力型のハイパフォーマンスCPUです。この製品をもってエヌビディアはCPU市場に参入します。
スイス・ナショナル・スーパーコンピューティング・センター(CSCS)とアメリカのロス・アラモス国立研究所が、グレイスを搭載したスーパーコンピュータを構築中で2023年に稼働開始予定です。
エヌビディアのこの動きは、まだスケジュールは不明ですが、近い将来のサーバー用、パソコン用CPUへの進出を示唆するものです。サーバー用、パソコン用CPUへの進出は、現在共存関係にあるインテルと敵対関係になるかもしれないリスクを伴うものですが(パソコン、サーバーでは、多くの場合、現在はインテルのCPUの横にエヌビディアのGPUが搭載されている)、GPUよりもCPUのほうが市場が大きいため、エヌビディアにとってはリスクを冒す価値のあるものと思われます。
3.2022年1月期、2023年1月期の楽天証券業績予想を上方修正する
2022年1月期1Qの会社側ガイダンスが上方修正されたことを受けて、楽天証券の2022年1月期、2023年1月期業績予想を上方修正します。2022年1月期は、前回予想の売上高230億ドル(前年比37.9%増)、営業利益65億ドル(同43.4%増)を、今回は売上高250億ドル(同49.9%増)、営業利益75億ドル(同65.5%増)に上方修正します。
また2023年1月期は、前回予想の売上高290億ドル(同26.1%増)、営業利益85億ドル(同30.8%増)を、今回は売上高340億ドル(同36.0%増)、営業利益110億ドル(同46.7%増)に上方修正します。
2022年1月期、2023年1月期とも、データセンター向けGPUがもっと大きく成長し、その次にゲーミング向けが高い成長率を示すと予想します。
リスクは、ゲーミング向けに含まれるマイニング向けです。暗号資産の相場次第でマイニング向けが増減すると予想されます。ただし、マイニング向けが今後大きく減少することがあっても、データセンター向けGPUと純粋なゲーミングPC用GPUの伸びで高い売上高成長と利益成長が可能と予想します。
4.今後6~12カ月間の目標株価を640ドルから820ドルに引き上げる
今後6~12カ月のエヌビディアの目標株価を、前回の640ドルから820ドルに引き上げます。2023年1月期の楽天証券予想営業増益率46.7%にPEGを1倍強として想定PERを50~55倍とし、これを2023年1月期楽天証券予想EPS15.69ドルに当てはめました。
中長期での投資妙味を感じます。
本レポートに掲載した銘柄:TSMC(TSM、台湾、NY ADR)、エヌビディア(NVDA、NASDAQ)