3,000億円…過去最大の罰金額…アリババは大丈夫か?
この制裁は、米市場、香港市場に重複上場し、世界中の投資家たちが注目するアリババという中国企業の動向を占うと同時に、勢いのある民間のIT企業を、中国政府が今後どのように扱うつもりかを読む上でも、重大なケースになります。冒頭の問題提起は、同社と中国マーケットの今後を懸念する投資家心理を赤裸々に体現するものだといえますし、私自身、懸念や注目に値する事象であると考えます。
3,000億円という金額は、アリババ社の2019年国内売上高の約4%に相当しますが、中国の法規制の罰金額上限、前年度売上高の10%を下回るものです。
4月10日、SAMRの決定を受けて同社は「今日という日は、弊社が発展していく過程における極めて重要な一日」と題した書簡を公開しました。そこでは、当局による罰金という決定を同社として「真摯(しんし)に受け入れ、断固服従する」と書かれています。また、ここ数カ月、当局による調査に全力で協力する過程で、国のプラットフォーム経済に対する政策や要求を真剣に学んできたとした上で、「今日の処罰は、我々にとっては警告とムチを意味しており、業界の発展を規範化、保護する類の策であり、国として公平な競争に裏打ちされた市場の環境を守るものだ」と、当局の政策を完全に擁護、支持する内容になっています。そして「この日を新たなスタートとし、問題を直視し、鋭意革新していく」と決意表明をしています。
アリババ社の張勇(ダニエル・チャン)最高経営責任者(CEO)は12日、メディアとアナリスト向けのオンライン会見を開き、当局による罰金と指導を受け、自社通販サイトに出店を希望するEC事業者に対する参入障壁や経費を下げるための方策を講じる考えを示し、重大な影響は見込んでいないという見解を示しました。
私も、幹部を含めた同社の従業員を複数知っていますが、11日から13日にかけて、彼らが私に語ったことをまとめると、今回の当局による罰金は、金額や時期を含めて、同社としては完全に想定内のものであり、引き続き中国というマーケットでビジネスをしていく上で必要なコストとプロセスだという認識のようです。また、某幹部は「これから数十億元を投資し、ビジネスモデルを刷新するための新たなサービス・商品を開発する。すでに着手している」と私に語りました。
実際、同社の当局による処罰への対応や態度を受けて、多くの投資家も、アリババのビジネスモデルや当局との関係をめぐる不安要素がある程度取り除かれ、とりあえず一段落だという見通しが広まったのか、週明けの12日、香港株式市場のハンセン指数が0.9%下落する中、アリババ社株は6.5%逆行高という結果でした。投資家心理として、当局のアリババ社への締め付けは限定的であり、かつある程度終了したと信じたい、ただ実際のところはまだ分からないといったあたりが真相でしょう。故に、同社にも投資をする多くの機関投資家が、より一層不安を解消すべく、私に中国政府当局の政策的意図を聞いてきたのだと思います。