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日銀のマイナス金利はなぜ効かないか
堀古 英司
ウォール街から~米国株の魅力~
ニューヨークのヘッジファンド運用マネジャーである堀古英司氏による週刊レポート。単なる分析にとどまらず、出来るだけ「裏を読む」という観点で米国経済、市場についてお伝えするコーナーで…

日銀のマイナス金利はなぜ効かないか

2016/2/1
日銀は1月29日、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和の導入」を発表しました。日銀はインフレ目標2%を掲げる限り、その達成見込みが低いと見れば策を講じるべきであり、その点で私は今回の決定を高く評価しています。
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日銀は1月29日、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和の導入」を発表しました。日銀はインフレ目標2%を掲げる限り、その達成見込みが低いと見れば策を講じるべきであり、その点で私は今回の決定を高く評価しています。マイナス金利政策は日本史上初ということで市場関係者の多くにとって未知の世界であることから期待が膨らみやすく、当面市場は好意的に反応するでしょう。しかし残念ながら、その効果は長続きしないと見ています。その理由は第一に、時期的に導入が遅すぎたからであり、第二に、水準的にまだまだ足りないから、そして第三に、外的要因です。

ご存知の通り、ヨーロッパにはここ数年でゼロ金利になり、マイナス金利に移行した国がいくつかあります。一方日本は、ゼロ金利政策が始まってから、ほぼゼロ金利という時期も含めると17年近くになるという「ゼロ金利の大先輩」です。そう考えると、デフレ退治に向けて果敢に取り組んでいるヨーロッパに比べて、マイナス金利政策の導入はかなり遅れたことになります。この点は、既成概念にとらわれてゼロ以下の金利を想定するというクリエイティブな発想ができない、日本の弱点が出てしまったと認めざるを得ません。マイナス金利政策は、日本だけで見れば史上初かもしれませんが、世界的に見れば日本は「マイナス金利の後輩」なのです。

私はいつも金融政策の遅れを、「誤診」と、「副作用を恐れる医者」に例えます。診察を間違える(インフレ目標達成可能と油断する)→病状が悪化する→副作用を恐れてなかなか薬を処方しない→病状が悪化する→ようやく薬を処方するが病状が悪化しているためなかなか効かない→もっと薬が必要になる。。。そもそも診察を間違えたのも問題ですが、薬の処方が遅れたことによって、かえって後になって大量の薬が必要になっているというパターンの繰り返しです。副作用ばかり恐れて薬を処方しなかったツケが今に回ってきているということで、かねてから申し上げている通り、タイミングは非常に重要だと思います。

さらに今回の程度のマイナス金利では、実質的な効果は殆ど期待できません。ご存知の通り、アベノミクス開始以降、ドル円と日経平均株価の動きはほぼ完璧に連動しており、ドル円が1%上昇すれば、日経平均株価は概ね2.3%上昇する計算です。これは感覚的にも分かりやすいと思います。円が安くなれば、ドル建てで見た日本の株価が安くなるのでそれを修正しようという動きが働きます。日本の物が割安になるので、海外で売れるようになるだけでなく、海外から人が来るようになります。日本の労働者も割安になるので、海外から企業が来るように、と円安はビジネスに相乗効果をもたらします。その点では、今後の日本経済を占うにあたって為替は非常に大きな要素です。そしてその為替の大きな決定要因となっているのは日米実質金利差です。

実質金利とは、名目金利から期待インフレ率を差し引いたものです。要するに、資金を円で運用するのとドルで運用するのと、実質ベースでどちらが有利か考えて、どちらも有利・不利にならないような水準で為替レートが決まる、というものです。現在のように、資本の移動が自由な状況においてはこの考え方は極めて自然であり、ここ10年ほどのドル円レートを見ても、短期的な乖離はあるにせよ、中長期的には極めて日米実質金利差の変化に忠実な動きをしていることが分かります。

その日米実質金利差から、我々が算出したドル円レートは現在、107円を示しています。これはもちろん、日銀がマイナス金利政策を導入した後の数字です。それでは日銀がマイナス金利政策を導入したのに、なぜこんなに円高の水準を示しているのでしょうか?

実は日本の実質金利は、この程度のマイナス金利を導入してもほとんど変わらないのです。というのは、特に年初からの世界的な株安等もあり、日本の期待インフレ率はジリジリ低下してきていたので、そもそも名目金利を引き下げないと、実質金利が上昇してしまうような状況だったのです。1月29日、日本の5年物国債利回りは0.08%だけ低下しましたが、それでようやく日本の実質金利が一定に保たれた形です。

問題はアメリカの実質金利です。米インフレ連動国債から見た実質金利は、去年12月の利上げに向けて上昇しましたが、その後年初来から低下の一途を辿っています。これは大きなドル安・円高要因で、主にアメリカの実質金利低下が要因で、適正ドル円レートが107円にまで低下したというわけです。一方で実際のドル円レートは、というと、日銀のマイナス金利政策導入による「期待」で逆に円安に振れ121円台を付けています。このような状況は過去にも何度もありましたが、いずれも最終的には日米実質金利差を反映した水準に落ち着いています。市場というのは短期的には期待が大きく影響するものですが、中長期的にはファンダメンタルズを反映した水準に落ち着くものだからです。そうなれば当然、日本の株価やビジネスにも影響し、マイナス金利の効果は打ち消されてしまうはずです。

私は前述のように、今回の日銀の決定は高く評価しています。しかし市場の「期待」とは裏腹に、実質的には今回のマイナス金利の効果は殆ど無いと思います。それはタイミングが遅いことに加えて、外的要因が大きすぎて、もちろんやらないよりは良いのですが、今回の程度のマイナス金利では、殆ど解決策にならないからなのです。

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