ボストンに場所を移すと、久しぶりに訪れたハーバード大学構内では、「キャンパス内を健康に保とう」「体調の兆候を自分からチェックしよう」「自分に何ができるのかを考えよう」「定期的に検査をしよう」といったスローガンが、大学当局によって呼びかけられていました。
私が訪れた頃はちょうど週末に重なり、天候が快晴に恵まれ、気温も20度以上に上がったこともあり、学生たちは、半袖短パンで、ハーバードスクエアでタピオカミルクティーを片手にブラブラするなど、大学街らしく、若々しい活気であふれていました。ところが、平日になると、授業がオンライン上で行われることもあり、キャンパスには人影がほとんどなくなっていました。
また、市民のコロナワクチンに対する姿勢や執着心が際立っていたのも印象的でした。
今回の出張でも引き続きコロナ禍ということで、対面による取材がなかなか困難で、最終的に、約半分は電話やビデオ通話のSkype(スカイプ)で実施せざるを得ませんでした。
特に、比較的年配の方へアポイントを取る際には、相手がすでにワクチンを受けているかどうか、接種後、ワクチン効果が顕在化するとされる2週間が経過しているかどうかを基準に、対面取材を受けるかどうかを、私は判断していました。
例えば、ハーバード大学の中国関連事業を担当する67歳の方は、私がボストンを訪れたとき、ちょうどワクチン接種から2週間が経過していて、約8時間、先方の自宅で食事をしながらじっくり話をすることができました。
一方、ボストン大学の中国問題専門家は、ワクチン接種からまだ数日しか経過していないとのことで、スカイプによる会話にしてほしいという要望を受けました。
ちなみに、この二人を含め、私が今回取材を申し込んだ大学関係者で、60歳以上の方は、「この1年間、基本的に外出していないし、誰とも会っていない」と言っていました。続けて、「ワクチンを接種すればライフスタイルは変わる。そしてワクチン接種率が社会全体で上昇すれば、経済は回復し、社会は再び活性化される」との見方を示していました。
今回、世界銀行やIMF(国際通貨基金)に所属する知人らとも会って話をしました。ワシントン市内中心部に位置する両機関の建物は依然封鎖され、スタッフはすでに1年以上リモートで働いているとのことでした。さらにIMFのある幹部によれば、オフィスに戻るのは来年2022年になると想定しているといいます。「リモートによる作業は、効率性は認めるものの、オンとオフの切り替えがしづらく、結果的にオフィス通勤時よりも仕事時間が無駄に長くなり、出張や対面会議もないため、面白みに欠ける、そろそろ限界だ」(同幹部)とフラストレーションをあらわにしていました。
私は米国滞在中、日々テレビ(例えばCNN)で新型コロナウイルスをめぐってアップデートされる情報をチェックしていました。前回滞在時は、テレビ画面の右側に、新型コロナの感染者数、死亡者数が、米国内と世界中という二つの数字が常時表示されていましたが、今回はそれに加えて、米国内におけるワクチン接種率が表示されていたのが変化でした。私が本稿を執筆している3月31日現在、米国でコロナによる死亡者は約55万人、ワクチン接種率は約15%です。
現地で観察している限り、米国民におけるワクチン接種率が上昇するにつれて、経済の回復や社会の活性化は正比例で改善されていくという先行きの明るさを実感しました。今回、私が話をした30代の比較的若い人々も、遅くとも今年上半期内にはワクチン接種ができるだろうとの見方を示していました。