為替DI:4月のドル/円、個人投資家の予想は?
楽天証券FXディーリング部 荒地 潤
楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示しています。
「4月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」
楽天証券が先月末に実施した相場アンケート調査によると、回答を頂いた個人投資家6,886人のうち約半数の49%(3,405人)が、4月のドル/円は「ドル高/円安」に動くと予想しています(先月は39%)。
反対に「ドル安/円高」に動くは最も少ない22%(1,487人)。残りの29%(1,994人)は「動かない(わからない)」でした。
全体に占める円安見通しの多さは2016年11月以来。当時のドル/円は、トランプ氏が米大統領選挙で番狂わせの勝利をおさめた直後から急激な円安に向かい、わずか1カ月のうちに17円も上昇しました。個人投資家にとって今回の円安の印象は、4年前に匹敵するほど強烈なのでしょう。
世界の株式市場がコロナ感染流行による最安値を記録してから1年が経ちました。その後世界の株式は75%上昇し、現在ではコロナ前のピークから約2割も上回っています。
今年に入ってからの株式市場は、米長期金利の急上昇や欧州でのコロナ感染第3波への懸念から神経質な取引が行われてきましたが、財政政策と金融政策の両エンジンがさらに一段の上昇余地を生み出す可能性があります。
「リスクオン」のマーケットを支えるもう一つの要因はワクチンです。アメリカをはじめワクチン接種が進む国では、かつての日常を取り戻そうという動きが強まっています。欧州のワクチン展開は英国に比べて大幅に遅れていますが、日本よりもはるかに進んでいます。
ワクチン接種率は、経済正常化のバロメーターと考えられています。アメリカでは3月末までに、全国民の30%強に当たる1億人余りが少なくとも1回のワクチン接種を受けました(日本はわずか0.76%)。その一方で、アメリカでは今も平均で1日約6万5,000人が感染しています(日本は1日約2,500人)。
ワクチンでコロナを完全退治できないからといって、日本国民へ供給が遅くていい理由にはならない。治療法が分からず重症化や死の危険があるウイルスと、危険だが治療手段があるウイルスとでは社会の不安感が全く違ってくる。ワクチンの効果はここにあります。
バブル経済崩壊後の日本の1990年代は、「失われた10年」と呼ばれました。しかし日本経済は、2000年代に入ってからも70年代や80年代の頃のような勢いを取り戻せないまま、気がつくと「失われた30年」が過ぎてしまった。コロナワクチンの接種率が経済再開と連動するならば、2020年代の日本経済は他国に大きく後れを取り「失われた40年」を歩むことになるかもしれません。
そのような事態にならないよう、日銀は量的・質的金融緩和政策によって日本経済を支えています。日銀は、必要とあれば、一段のマイナス金利「深掘り」の意向を示しています。
しかし、「マイナス金利は効果がない」というのが金融界の通説。マイナス金利を採用する欧州と日本の銀行のデータを分析した結果、マイナス金利が長く続くほど、銀行の収益性と貸し出しの両方が低下することが分かっています。マイナス金利の状況下における銀行の融資は最初の1年間は増加するものの、その後2年間は融資がマイナスに転じ、当初の増加分以上に減少しています。
楽天証券の相場アンケート調査によると、個人投資家の30%が4月のユーロ/円は「ユーロ高/円安」に動くと予想しています(先月は26%)。
「ユーロ高/円安」予想が全体の30%を占めたのは,昨年2月以来のことで、コロナ感染流行前の時。ユーロ/円は一足早く「アフターコロナ」になりました。
「ユーロ安/円高」に動くは、最も少ない21%。最も多かった回答は「動かない(わからない)」の 49%。
楽天証券の相場アンケート調査によると、個人投資家の28%が4月の豪ドル/円は「豪ドル高/円安」に動くと予想(先月も28%)。
「豪ドル安/円高」に動くは、18%。最も多かった回答は相変わらずの「動かない(わからない)」で54%でした。
終値ベースでも4円も円安に動いた豪ドル/円に対して、個人投資家の過半数が「動かない」と「わからない」でした。