はじめに

 今回のアンケート調査は2021年3月29日(月)~3月31日(水)の期間で行われました。

 3月末の日経平均は2万9,178円で取引を終えました。月足ベースでは5カ月連続で上昇し、前月末終値(2万8,966円)からの上げ幅は212円と小幅だったものの、月間の値幅(高値と安値の差)は2,106円と比較的大きくなりました。

 あらためて、月間の日経平均の値動きを振り返ってみると、米金利の上昇や新型コロナウイルスの感染拡大に対する警戒感と、米国の追加経済政策や、ワクチン接種普及による正常化期待が綱引きをする格好で上げ下げを繰り返す展開が続きました。3万円台乗せや2万9,000円台割れの場面もありましたが、おおむね2万9,000円台での推移が中心となりました。

 銘柄物色についても、成長株と景気敏感株とのあいだを資金が往来する中、後者がやや優勢となり、日経平均よりもTOPIX(東証株価指数)、NASDAQよりもNYダウが優勢となる局面が目立ちました。

 このような中で行われた今回のアンケートは6,800名を超える個人投資家からの回答を頂きました。日経平均と米ドル/円の見通しDIは、それぞれ「株高・円安」の結果となりましたが、前回調査にくらべて、慎重な見方も増えてきたような印象となっています。

 次回もぜひ、本アンケートにご協力をお願いいたします。

日経平均の見通し 

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

「強気見通し継続も、目先の調整に警戒か?」

 今回調査における日経平均の見通しDIの結果は、1カ月先がプラス16.11、3カ月先はプラス7.16となりました。前回調査がそれぞれプラス29.16、12.68でしたので、ともにDIの値を縮小させた格好です。

 とはいえ、回答の内訳グラフで細かく見てみると、どちらも強気派の割合が30%を超えていることもあり、強気の見方は依然として継続していることに変わりはありません。前回調査での1月先の強気派は40%を超えていたこともあり、過度な強気が修正されたと考えた方が良さそうです。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 とはいえ、弱気派が増えていることにも着目しておく必要がありそうです。前回調査では1カ月先が13.11%、3カ月先は22.00%となっていましたが、上の内訳グラフを見ても分かるように、それぞれ17.03%、25.24%と増加しています。

 4月の新年度相場入りとなった足元の株式市場ですが、日経平均は一段高で取引をスタートさせ、5日には3万円台乗せまで順調に値を伸ばしたものの、以降は失速して再び3万円台を下回る展開となっています。まだ相場が崩れ始めたと言える段階ではないものの、これまでのところ慌ただしい値動きとなっています。

 こうした値動きの背景には、期待を先取りしてきた高値警戒感をはじめ、オプション・mini先物取引のSQを控えた需給的な動き、日米の決算シーズンを前にした調整などといった見方があるようですが、「金融相場から業績相場」への移行が注目される中で、企業業績動向をにらみつつ、しっかりと3万円台を超えていけるか、相場にとってネガティブな材料(米金利上昇や新型コロナウイルスの感染状況など)への関心度も値動きに影響を与えそうです。

 とりわけ新型コロナウイルスについては、想定を上回るペースでワクチン接種が進んでいる米国などに比べて、日本は出遅れている状況で、この傾向は非製造業の景況感の回復の差などに現れ始めています。

 4月1日に公表された日銀短観では、大企業製造業の景況感(DI)が、コロナ前の状況に回復したことなどが好感されましたが、非製造業についてはまだまだ本格的な回復基調に乗れていません。そのため、景気敏感株への物色が幅広い米株市場と異なり、日本株は、海外で稼ぐ企業がより選好されそうなど、銘柄が選別されることになり、相場全体の底上げが限定的になる可能性があります。

 また、先日打ち出された米国の追加経済政策についても、半導体関連株などのグロース株が買われて「政策に売りなし」の雰囲気も出てきましたが、これから政策を実現させていく段階ですので、まだ期待先行の面が強いと言えます。

 今回の追加経済政策は、バイデン大統領が述べているように、「中国との競争に打ち勝つ」という部分が強調されています。米議会では今回の政策を議論するにあたり、与野党を問わず反対の声が予想されていますが、とりわけ、今回の政策の財源として、法人税の引き上げなどの企業増税で賄うやり方は、法人税を引き下げてきたこれまでとは180度の方向転換でもあるため、反対の声は大きそうです。そのため、超党派で賛同が得られやすい対中国政策の側面を打ち出して乗り切ろうとする思惑が感じ取れます。

 まもなく日米の決算シーズンが本格化していきますが、先取りしてきた期待と現実とのギャップが意識されることが想定されます。企業業績が材料出尽くしとなるか、さらなる上値追いのきっかけとなるかがポイントになりそうです。

楽天DI  2021年3月 

楽天証券経済研究所 根岸 美知代

【今月の質問1】 日経平均3万円はバブルだと思いますか?

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

  日経平均3万円は、「バブルだとは思わない」約6割、「バブルだと思う」が約4割でした。

【今月の質問2】 2021年になって、日本株または米国株等の取引をしましたか?(複数回答可)

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 ご回答いただいた6,884名のうち、2021年に取引をした方が約9割、「何も売買していない」方が約1割」いらっしゃいました。

【今月の質問3】 今、おすすめだと思う日本株または米国株の銘柄名を1つだけ教えてください。

 いろいろな角度から見たベスト10の発表です。

おすすめだと思う 日本株・米国株総合ベスト10

順位   銘柄コード 銘柄名 投票数
1 日本株 4755 楽天グループ 138
2 米国株 AAPL Apple 106
3 日本株 7203 トヨタ自動車 89
3 米国株 TSLA テスラ 89
5 日本株 6758 ソニーグループ 87
6 日本株 8306 三菱UFJフィナンシャル・グループ 77
7 日本株 2914 JT 72
8 日本株 8591 オリックス 65
9 日本株 5020 ENEOSホールディングス 62
10 日本株 9202 ANAホールディングス 58
(注)上記はアンケート結果集計で、楽天証券の推奨ではありません

おすすめだと思う日本株 ベスト10

順位 銘柄コード 銘柄名 投票数
1 4755 楽天グループ 138
2 7203 トヨタ自動車 89
3 6758 ソニーグループ 87
4 8306 三菱UFJフィナンシャル・グループ 77
5 2914 JT 72
6 8591 オリックス 65
7 5020 ENEOSホールディングス 62
8 9202 ANAホールディングス 58
9 9434 ソフトバンク 54
10 4502 武田薬品 52
(注)上記はアンケート結果集計で、楽天証券の推奨ではありません

おすすめだと思う米国株 ベスト10

順位 銘柄コード 銘柄名 投票数
1 AAPL Apple 106
2 TSLA テスラ 89
3 ZM ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ 36
4 AMZN アマゾン・ドット・コム 33
5 JNJ ジョンソン・エンド・ジョンソン 31
6 KO コカ・コーラ 28
7 T AT&T 25
8 PFE ファイザー 21
9 SQ SQUARE 17
10 INTC インテル 13
10 MSFT マイクロソフト 13
(注)上記はアンケート結果集計で、楽天証券の推奨ではありません

日経平均3万円は、「バブルだとは思わない」派のベスト10

順位   銘柄コード 銘柄名 投票数
1 日本株 4755 楽天グループ 86
2 米国株 AAPL Apple 66
2 日本株 6758 ソニーグループ 66
4 米国株 TSLA テスラ 58
5 日本株 8306 三菱UFJフィナンシャル・グループ 53
6 日本株 7203 トヨタ自動車 49
7 日本株 5020 ENEOS 44
8 日本株 2914 JT 40
9 日本株 9434 ソフトバンク 36
10 日本株 9202 ANA 34
(注)上記はアンケート結果集計で、楽天証券の推奨ではありません

日経平均3万円は、「バブルだと思う」派のベスト10

順位   銘柄コード 銘柄名 投票数
1 日本株 4755 楽天グループ 52
2 米国株 AAPL Apple 40
3 日本株 7203 トヨタ自動車 39
4 日本株 2914 JT 32
4 日本株 8591 オリックス 32
6 米国株 TSLA テスラ 31
7 日本株 8306 三菱UFJフィナンシャル・グループ 24
7 日本株 9202 ANA 24
9 日本株 4502 武田薬品工業 23
10 日本株 6758 ソニーグループ 21
(注)上記はアンケート結果集計で、楽天証券の推奨ではありません

 今回もたくさんのご意見をありがとうございました。

為替DI:4月のドル/円、個人投資家の予想は?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示しています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

「4月のドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」

 楽天証券が先月末に実施した相場アンケート調査によると、回答を頂いた個人投資家6,886人のうち約半数の49%(3,405人)が、4月のドル/円は「ドル高/円安」に動くと予想しています(先月は39%)。

 反対に「ドル安/円高」に動くは最も少ない22%(1,487人)。残りの29%(1,994人)は「動かない(わからない)」でした。

 全体に占める円安見通しの多さは2016年11月以来。当時のドル/円は、トランプ氏が米大統領選挙で番狂わせの勝利をおさめた直後から急激な円安に向かい、わずか1カ月のうちに17円も上昇しました。個人投資家にとって今回の円安の印象は、4年前に匹敵するほど強烈なのでしょう。

 世界の株式市場がコロナ感染流行による最安値を記録してから1年が経ちました。その後世界の株式は75%上昇し、現在ではコロナ前のピークから約2割も上回っています。

 今年に入ってからの株式市場は、米長期金利の急上昇や欧州でのコロナ感染第3波への懸念から神経質な取引が行われてきましたが、財政政策と金融政策の両エンジンがさらに一段の上昇余地を生み出す可能性があります。

「リスクオン」のマーケットを支えるもう一つの要因はワクチンです。アメリカをはじめワクチン接種が進む国では、かつての日常を取り戻そうという動きが強まっています。欧州のワクチン展開は英国に比べて大幅に遅れていますが、日本よりもはるかに進んでいます。

 ワクチン接種率は、経済正常化のバロメーターと考えられています。アメリカでは3月末までに、全国民の30%強に当たる1億人余りが少なくとも1回のワクチン接種を受けました(日本はわずか0.76%)。その一方で、アメリカでは今も平均で1日約6万5,000人が感染しています(日本は1日約2,500人)。

 ワクチンでコロナを完全退治できないからといって、日本国民へ供給が遅くていい理由にはならない。治療法が分からず重症化や死の危険があるウイルスと、危険だが治療手段があるウイルスとでは社会の不安感が全く違ってくる。ワクチンの効果はここにあります。

 バブル経済崩壊後の日本の1990年代は、「失われた10年」と呼ばれました。しかし日本経済は、2000年代に入ってからも70年代や80年代の頃のような勢いを取り戻せないまま、気がつくと「失われた30年」が過ぎてしまった。コロナワクチンの接種率が経済再開と連動するならば、2020年代の日本経済は他国に大きく後れを取り「失われた40年」を歩むことになるかもしれません。

 そのような事態にならないよう、日銀は量的・質的金融緩和政策によって日本経済を支えています。日銀は、必要とあれば、一段のマイナス金利「深掘り」の意向を示しています。

 しかし、「マイナス金利は効果がない」というのが金融界の通説。マイナス金利を採用する欧州と日本の銀行のデータを分析した結果、マイナス金利が長く続くほど、銀行の収益性と貸し出しの両方が低下することが分かっています。マイナス金利の状況下における銀行の融資は最初の1年間は増加するものの、その後2年間は融資がマイナスに転じ、当初の増加分以上に減少しています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券の相場アンケート調査によると、個人投資家の30%が4月のユーロ/円は「ユーロ高/円安」に動くと予想しています(先月は26%)。

「ユーロ高/円安」予想が全体の30%を占めたのは,昨年2月以来のことで、コロナ感染流行前の時。ユーロ/円は一足早く「アフターコロナ」になりました。

ユーロ安/円高」に動くは、最も少ない21%。最も多かった回答は「動かない(わからない)」の 49%。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券の相場アンケート調査によると、個人投資家の28%が4月の豪ドル/円は「豪ドル高/円安」に動くと予想(先月も28%)。

豪ドル安/円高」に動くは、18%。最も多かった回答は相変わらずの「動かない(わからない)」で54%でした。

 終値ベースでも4円も円安に動いた豪ドル/円に対して、個人投資家の過半数が「動かない」と「わからない」でした。

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい国(地域)」のうち、「アメリカ」と「日本」と答えたお客様の割合の差に注目します。

 当該質問は複数回答可で、選択肢は、日本、アメリカ、ユーロ圏、オセアニア、中国、ブラジル、ロシア、インド、東南アジア、中南米(ブラジル除く)、東欧、アフリカ、特になし、の13個です。

図:質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「アメリカ」と「日本」を選択したお客様の割合の差(アメリカ-日本)

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 上記のグラフは、質問「今後、投資してみたい国(地域)」の回答結果より、「アメリカ」から「日本」を引いた、日米金利差ならぬ、「日米投資指向差」を示しています。2019年ごろから、“アメリカ優勢”が続いています。

 近年、インターネットや電子機器、インフラなどの普及・技術革新によって、スマートフォンによる取引の一般化が進みました。今では個人投資家の皆様とスマートフォンは切っても切り離せない関係にあると、筆者は感じています。

 こうした社会の変化と同時進行するように、米国株の高騰が目立つようになり(もちろん国内株式も魅力的なのですが)、「スマホ×米国株→個人投資家の皆様の売買増加」という図式が際立ってきています。「日米投資指向差」が近年、アメリカ優勢で推移している背景には、スマホで取引するお客様の増加と米国株の高騰の同時進行、が挙げられると考えられます。

「日米金利差」はドル/円の動向を評価する上で、重要な指標とされています。日米の10年債利回りにおいて、「アメリカ」から「日本」を引いた値が大きくなればなるほど(金利差拡大)ドル/円相場に上昇圧力がかかり、小さくなればなるほど(金利差縮小)下落圧力がかかるとされています。

 本欄で述べた「日米投資指向差」の動向は、どのような意味があるのでしょうか。筆者は、その値が大きくなればなるほど、日本の個人投資家の皆様における国際分散投資が進んでいることを、小さくなればなるほど、国際分散投資が進んでいないことを示す指標になっていると、考えています。

 この「日米投資指向差」は、日本の個人投資家の皆様における国際分散投資の状況を示すヒントとなり得る他、さまざまな日本の個人投資家の皆様の現状を示す指標になると考えられます。まだまだ議論の余地が大きいテーマですので、引き続き、この「日米投資指向差」に注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2021年3月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2021年3月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成