いわゆる「LINE問題」が世間を騒がせています。

 去る3月17日、国内に保存されたユーザーの個人情報について、十分な説明のないまま中国の関連会社の技術者がアクセスできるよう設定していたことを、朝日新聞が報じたことを引き金に、一連の騒動に発展しています。通信アプリ「LINE」ユーザーは国内で8,600万人を超えるとされ、行政内部におけるやり取り、および行政サービスでも、広範、日常的に利用されてきました。故に、官民を超え、日本中を震撼させる事態へと展開を見せているのでしょう。

 私自身、帰国時の空港で設定された「LINE」アプリから、14日間の自宅隔離期間中の健康状況を、日々報告したのを克明に覚えています。

 通信という分野に全く疎い私から見ても、今回の事件は、IT時代におけるデータ管理、プライバシー保護、ビジネスモデルや行政の在り方、国境を越えたビジネスやサービスに潜むリスク、対外関係、国民感情など、あらゆる要素が複合的に絡み合った問題です。

 23日夜、会見を開いたLINEの出沢剛社長は、「グローバルで成長してきたが、世の中の状況の変化で見落としてきたことが多かった」と反省の念を述べています。しかし、LINE社だけでなく、政府や国民がこの問題から教訓を見出し、グローバル化するIT時代におけるコミュニケーションの在り方を再考、再出発する機会になればと切に願います。

 本レポートでは、私の専門分野である中国という1点に絞り、今回のLINE問題を紐解くためのケーススタディーとなるよう解説します。

 具体的には、(1)中国という要素がLINE問題に火に油を注いだ理由、(2)中国でデータ管理やプライバシー保護はどうなっているのか、(3)中国の何が問題なのか、という3点を、私自身の体験を交えつつ、考えます。