4つ目:北京冬季五輪を何としても成功させたいから

 中国にとって、言うまでもなく、東京夏季五輪よりも断然重要なのが、北京冬季五輪2022です。五輪は平和の祭典とはいいますが、そこには政治性という要素が色濃く働きます。1980年、冷戦下で開催されたモスクワ五輪を日本がボイコットしたのは一つの例です。

 中国共産党による対新疆ウイグル自治区や香港特別行政区への政策が引き金となり、西側諸国が「人権」を振りかざしつつ、北京冬季五輪をボイコットしてくるシナリオを、中国は警戒しています。仮にそれが米国1国、米英2国、あるいは「ファイブアイズ」(英米、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの5カ国が機密情報を共有する枠組み)くらいであれば許容範囲内でしょう。ただ、ここに日本を含めたG7(主要7カ国)全加盟国がボイコット、欧米諸国か西側陣営の3分の1がボイコットといった事態になれば、北京冬季五輪の正当性には相当程度ヒビが入るのは避けられません。

 このような事態を阻止するための一環として、中国は東京夏季五輪を支持するのです。五輪とは国家やイデオロギーを超えたところにあるべき平和の祭典、どんな状況下でも互いに支持し合うべきだと訴えることで、自国開催への支持を取り付けたいのです。事前の開催国が、同じアジア、しかも米国の同盟国、西側陣営の一員である日本であればなおさらです。

5つ目:「北京冬季五輪で人類はコロナに打ち勝った」は必要ない

 中国は自らの体制や国情の「異質性」を自覚し、それを払拭(ふっしょく)すべくもがいてきました。

 世界第2の経済大国でありながら、自国は世界で5カ国しか残っていない社会主義国であること。共産党一党支配体制下における政治や政策が内外で批判を浴びていること。中国が国家として信用されない根本的原因が体制そのものにあること。

 このような状況下で、中国は各国にはそれぞれの歴史や文化、発展の進路があり、すべての国はそれらを互いに尊重すべきだと呼び掛けつつ、一方で、中国だけが特別、異質だと認識され、その過程で孤立する局面を嫌う傾向があります。

 中国は異質性が原因で、孤立したくないのです。

「中国だけは特別」ではなく、「中国も国際社会の一員」という物語を作っていきたいということです。「オンリーワン」よりも、「共に戦った」という証しが欲しいのです。

 その意味で、中国共産党としては、「東京五輪が中止になった2021年7月の段階では人類がいまだコロナに打ち勝てなかった。2022年2月になり、北京五輪で、その時がようやく訪れた」ではなく、「東京五輪に続いて、北京五輪の開催を通じて、アジアを舞台に、人類は新型コロナウイルスに打ち勝ったことをついに証明した」という物語を断然好み、それを作り上げたいのです。この物語は、中国の国民や世論からも広範な支持を得るでしょう。

 まあ、中国当局は、運営面、安全面、経済効果を含め、北京五輪のほうが東京五輪よりも円満、順調に開催されたという評価を国際社会から得るべく、戦略的沈黙を保ち、したたかに、全力で取り組んでくるのは間違いないでしょうが。