ワクチン普及スピードが為替の変動要因?

 先程、英国と欧州とのワクチン普及スピードの違いから投資家がユーロ売り・ポンド買いを選好しているとの話をしましたが、このワクチン普及に絡む比較は、今後日本とそれ以外との国との比較に及び、新たな為替の変動要因として働くかもしれないため留意する必要がありそうです。

 日本はいよいよ17日からワクチン接種が始まります。まずは医療従事者約4万人を対象に全国の国立病院など100の医療機関でファイザー製のワクチン接種が始まります。3月までに370万人の医療従事者、65歳以上の高齢者3,600万人への接種は4月以降との予定です。

 しかし、日本のワクチン接種が予定より遅れてくると、経済活動の制限が続き、経済回復が他国よりも遅れるとの思惑から円売りに傾くかもしれません。日本は英米に比べると2カ月遅れのスタートですが、このことは既に織り込み済みです。しかし、ワクチンの調達状況、接種会場の確保、接種従事者の確保がひとつでも不足状態になると接種目標は遅れることになり、相場への波乱要因になるかもしれません。EU(欧州連合)のワクチン供給の混乱が日本にも影響してくる可能性もあります。逆に、予想以上の接種スピードだと円買い要因になるかもしれません。

 また、日本のワクチン購入代金は各社からの供給予定3億回分に対して3,000億~4,000億円かかるとの試算があります。これらは対ドルや対ユーロで為替が発生することになり、円安要因になります。ただ、一度に発生するのではなく輸入毎に発生するため、ドル/円を円安に押し上げるというよりも、円高抑制になるような影響ではないかとみています。

 英国は2月中旬までの約1カ月半で1,500万人接種の目標を達成しました。秋までに国内成人のすべてに接種するとジョンソン首相は力強く述べていました。この英国の進捗状況がひとつの目安になるかもしれません。今後、ワクチン普及スピードがドル/円の変動要因として働くのかどうか注目です。

 それからドル/円を押し上げてきたもう一つの要因である米長期金利の動きにも注目です。米10年債利回りは1.3%を超え、1年前の水準になりましたが、ややスピードが速すぎます。2月23日にFRBのパウエル議長の議会証言が予定されています。パウエル議長は、この長期金利の上昇についてどのような見解を示すのでしょうか。現状追認すれば円安維持、スピード感を冷やすような話をすれば長期金利は下落し、円高要因となるため注目です。