任天堂

1.2021年3月期3Qは9.7%増収、36.1%営業増益

 任天堂の2021年3月期3Qは、売上高6,349億3,900万円(前年比9.7%増)、営業利益2,296億8,400万円(同36.1%増)となりました。ニンテンドースイッチ・ハード(標準型とライトの合計)は今3Q1,157万台(同7.0%増)と前年水準を上回りました。同ソフトは、7,585万本(同17.3%増。任天堂とサードパーティのソフトの合計)と順調に伸びました。

 今3Qにミリオンセラーとなった任天堂製ソフトは、「あつまれ どうぶつの森」(2020年3月20日発売)514万本、「マリオカート8デラックス」(2017年4月28日発売)443万本、「スーパーマリオ3Dコレクション」(2020年9月18日発売)311万本、「リングフィットアドベンチャー」(2019年10月18日発売)284万本、「ゼルダ無双 災厄の黙示録」(2020年11月20日発売。開発はコーエーテクモホールディングス。任天堂が欧米でライセンス販売している。)284万本、「ピクミン3デラックス」(2020年10月30日発売)194万本、「大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL」(2018年12月7日発売)175万本などとなりました。

 会社側開示資料をもとに計算すると、今3Qの任天堂製ミリオンセラーソフトの販売本数は合計3,063万本、このうち今2Qまでに発売されたソフトは2,477万本となっています。任天堂の会計では、新作ソフトの開発費は発売日までに経費処理されます。そのため、今2Qまでに発売されたソフト(代表例は「マリオカート8デラックス」「あつまれ どうぶつの森」など)が、今3Qに対して大きく貢献したと思われます。

 デジタル売上高比率は、今3Q32.1%(前3Q22.3%)となり、これも業績に貢献しました。

表5 任天堂の業績

株価 64,350円(2021/2/10)
発行済み株数 119,123千株
時価総額 7,665,565百万円(2021/2/10)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:発行済み株数は自己株式を除いたもの。
注2:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。

表6 任天堂:ニンテンドースイッチ・ハード、ソフトの販売台数、本数(四半期ベース)

単位:万台、万本
出所:会社資料より楽天証券作成。
注:端数処理の関係で一部合計が合わない場合がある。

表7 主要な任天堂製ニンテンドースイッチ用ソフトの販売本数

単位:万本
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:任天堂出荷ベース、ダウンロード、ハードウェア同梱を含む。
注2:端数処理のため合計が合わない場合がある。

2.2021年3月期会社予想業績は上方修正されたが、更に上乗せの可能性がある。

 今3Qまでの実績を受けて、会社側は2021年3月期予想業績を、前回の売上高1兆4,000億円(前年比7.0%増)、営業利益4,500億円(同27.7%増)から、売上高1兆6,000億円(同22.3%増)、営業利益5,600億円(同58.9%増)へ上方修正しました。

 2021年3月期のニンテンドースイッチ・ハード、ソフト販売数量の会社予想は、ハードは前回の2,400万台が2,650万台へ、ソフトは1億7,000万本が2億500万本へ上方修正されました(ハードは標準型とライトの合計)。これに対して楽天証券予想は、ニンテンドースイッチ標準型は前回の1,900万台を2,050万台へ、ライトは700万台を800万台へ各々上方修正します。ニンテンドースイッチは標準型、ライト合わせて2,850万台と会社予想の2,650万台を上回ると予想しましたが、この程度の増産は可能と思われます(今のところ、電子部品、半導体の不足による生産懸念はなさそうです)。また、ソフトは2億2,000万本で前回予想を据え置きます。

 ハード、ソフトの売上動向を踏まえて、2021年3月期楽天証券業績予想は、前回の売上高1兆5,500億円(同18.5%増)、営業利益5,800億円(同64.6%増)を、売上高1兆6,900億円(同29.2%増)、営業利益6,100億円(同73.1%増)へ上方修正します。特に欧米では昨年年末から新型コロナ変異種の感染拡大によって再び巣ごもり需要が増えてきたと思われること、日本でも緊急事態宣言に伴い、巣ごもりゲーム需要が発生してきたと思われることを織り込みました。会社側では今4Q業績を保守的に見ていると思われることも考慮しました。

 なお配当は、会社予想では従来の計算による1,680円に好業績による加算分200円を加えた1,880円となります。

表8 任天堂の業績予想の前提(2021年2月)

出所:楽天証券作成
注:家庭用ゲーム(前回、今回)のニンテンドースイッチ(標準型)会社予想には、ライトを含む。同楽天証券予想はライトを除く。

 

3.来期がニンテンドースイッチ時代の業績のピークか

 任天堂の業績は、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大によって引き起こされた「巣ごもり消費」の影響で、2020年3月期4Qからそれまでの業績トレンドからかい離した好業績となっています。任天堂の過去最高営業利益は2009年3月期5,553億円ですが、今期は会社予想ではこれを上回る5,600億円、楽天証券予想でも6,100億円の営業利益を予想します。

 ただし、新型コロナの感染の勢いが今後新型ワクチンや治療薬によって鈍くなっていき、数年間かけて世界が平常に戻るのであれば、巣ごもり需要は先細りになる可能性があります。また、新型コロナの変異種の克服が困難で感染拡大が続く場合でも、経済的な苦境に陥る国が増え、財政難から国民に対する給付金が削減され、不況が深刻化すれば、ゲームに回る購買力は減少する可能性があります。

 任天堂の業績が来期にもピークアウトする可能性は、四半期ごとの業績変化にすでに現れています。世界的に巣ごもり消費が始まった2020年3月期4Q(2020年1-3月期)の前年比の増収増益率は、40.6%増収、営業利益3.0倍でした。今期2021年3月期に入って今1Qは、売上高2.1倍、営業利益5.3倍、今2Qは51.3%増収、営業利益2.2倍でした。これが、今3Qになると、9.7%増収、36.1%営業増益と業績順調ながらも増収増益率が鈍化しています。

 来期は1Q、2Qの業績に注意が必要になります。今1Q、2Qの業績水準が高すぎるからです。来期には、大型新作ソフトの投入が予想されますが(ただし、現時点で公表されているのは「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」続編(発売日未定)のみ)、長く売れ筋になっている「マリオカート8デラックス」「あつまれ どうぶつの森」のような人気作に匹敵する人気と収益性が大型新作ソフトに期待できるのか、発売してみなければ不透明な部分があります。楽天証券では、2022年3月期を売上高1兆7,500億円(前年比3.6%増)、営業利益6,400億円(同4.9%増)と予想します(前回予想と同じ)。

4.任天堂は業績下降局面に備え始めていると思われる

 2021年3月期3Qの決算説明会とその後のIRへの取材を通じて私が感じたことは、任天堂はすでに業績下降局面入りしたときの対応を考えているということです。2021年3月期3Q決算説明会でニンテンドースイッチの新機種の発表はありませんでした。ニンテンドースイッチ・ハードが発売4年目で過去最高の販売台数を記録しており、好調だからです。ここから考えると、ニンテンドースイッチの上位機種は、今年2021年には発売されないと思われます。上位機種が発売される場合は、業績が下降局面入りしたときに、それを緩やかなものにするためのカンフル剤として使われると思われます。今後の新作ソフトもそうです。

 ただし、巣ごもり消費によって膨れた業績を大型新作ソフトで支える場合でも、困難が予想されます。そのため、2023年3月期から任天堂の業績は減収減益局面に入る可能性があります。

 ここで重要なのは、どのような優良エンタテインメントでも、同じようなものを続けて体験すれば、ユーザーはいずれ飽きるということです。これまでの任天堂の家庭用ゲームビジネスの歴史を見れば、ユーザーが飽き始めたときが市場がピークアウトするタイミングで、ゲームクリエーターが飽き始めたとき(そのゲーム機の機能を多くのクリエーターが使い切ったとき)が次世代機発売のタイミングでした。今回もおそらくそうなるのではないかと思われます。

 次世代機(ニンテンドースイッチの後継機)発売は、2024年以降と思われます。現在急速な技術革新の只中にあるCPU、GPU、通信技術など、家庭用ゲーム機に必要な重要テクノロジーの方向性が定まってからと思われます。

5.今後6~12カ月間の目標株価は前回の6万5,000円を7万2,000円に引き上げる

 今後6~12カ月間の目標株価は、前回の6万5,000円を7万2,000円に引き上げます。

 前述の考え方から、楽天証券の2022年3月期予想EPS 3,903.5円に、業績変化率が今後鈍くなっていき、2023年3月期以降業績下降局面入りするリスクを考慮して、想定PER15~20倍を当てはめました。業績水準が高いため、目標株価を引き上げることになります。

 短期的には、来期から投入されるであろう大型新作ソフトや2022年に予想されるニンテンドースイッチ上位機種への期待から、株価が7万円から7万5,000円のレンジに上昇する可能性もあると考えます。また、株価の変動率が比較的あるため、短期投資(おおむね1~2カ月以下)で成果が上がる可能性も否定しません。

 ただし、6~12カ月以上の中長期投資の場合、いつ業績がピークアウトするのかを気にしなければならない会社への投資には難しいものがあると思われます。中長期投資の場合は、これ以上保有しても十分なパフォーマンスが上がりにくい局面になりつつあるというのが私の意見です。

グラフ4 任天堂のゲームサイクル:据置型ハードウェア

単位:万台、出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券

グラフ5 任天堂のゲームサイクル:携帯型ハードウェア

単位:万台、出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券

グラフ6 任天堂のゲームサイクル:据置型ソフトウェア

単位:万本、出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券、注:ニンテンドースイッチ用ソフトにはライト用も含まれる

本レポートに掲載した銘柄:ソニー(6758)任天堂(7974)