アドバンテスト

1.2021年3月期3Qは11.7%増収、6.9%営業増益

 アドバンテストの2021年3月期3Qは、売上高780億7,200万円(前年比11.7%増)、営業利益152億4,100万円(同6.9%増)となりました。

 SoCテスタ売上高は、今1Q251億円、今2Q280億円、今3Q393億円と好調でした。今3Qはディスプレイ・ドライバー・IC用テスタとイメージセンサー用テスタが伸びました。

 またSoCテスタ受注は、今1Q250億円、今2Q358億円、今3Q542億円と急増しました。2020年3月期決算発表時に会社側は、2020年9月15日付けで西側からファーウェイに向けた半導体輸出が禁輸となることに伴って、SoCテスタ需要の先行きに懸念があるとしました。実際にその時点で、OSAT(半導体後工程専門業者)保有のSoCテスタが過剰になっていたもようです。

 ところが、ファーウェイ製スマホの市場シェア低下を予想した競合スマホメーカー(特に中国スマホメーカー)が今1Q、2Qとシェア獲得のために5Gスマホの増産体制をとり、半導体の発注を増やしたため、発注先のファウンドリやOSATもSoCテスタへの投資を増やすことになりました。そのため、会社側の見方によれば、今3QでOSATのSoCテスタ余剰在庫は解消されたです。

 この結果、SoCテスタ受注が大きく伸びることになりました。今3Qはこれまでのように、5Gスマホに搭載されるアプリケーションプロセッサ用SoCテスタの受注増加も寄与しましたが(アプリケーションプロセッサは、カメラ、ディスプレイ、ゲーム機能など各種アプリケーションを操作する半導体。年々中身が複雑になっている)、5Gスマホに有機ELディスプレイが搭載されることが多くなってきたことに伴って、ディスプレイ・ドライバー・IC用テスタの受注が急増しました。また、HPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング。高性能パソコン、高性能サーバー向けCPU、GPUなど)向けテスタの需要も堅調です。SoCテスタの受注増加は当面続く可能性があります。

 またメモリ・テスタは、売上高は今1Q172億円、今2Q195億円、今3Q130億円となり、今3Qは前期比で減収となりました。一方受注高は、同じく174億円、90億円、126億円と四半期によって増減はありますが、受注が増える方向にあります。今3Qの受注増加は中国向けの増加によるもの、減収は今2Qに受注が減少したことによるものです。今後は5Gスマホ向け、HPC向けメモリ・テスタの増加とともに、新型ゲーム機用SSD向けテスタの増加も予想されます。

 このような動きの結果、今3Qの全社受注高は過去最高の951億円となりました。

表4 アドバンテストの業績

株価    8,450円(2021/1/28)
発行済み株数    196,218千株 
時価総額    1,658,042百万円(2021/1/28)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:発行済み株数は自己株式を除いたもの。
注2:当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益。

グラフ2 アドバンテストの半導体テスタ受注動向

単位:億円、出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ3 アドバンテストの全社受注高

単位:億円、出所:会社資料より楽天証券作成、注:2000年3月期1Qから2002年3月期4Qまでは会社資料を基に楽天証券推定

2.システムレベル・テストの受注高、売上高が増加中

「サービス他」の受注高と売上高が、2020年3月期から増加しています(グラフ4)。このけん引役が、「システムレベル・テスト(SLT)」です。

 半導体のテストには、完成した半導体を1個づつ検査する個別検査と、複数の半導体をボードに載せた状態で検査するボード検査の2種類があります(ボード検査に合格するとそのボードを電子機器に組み込む)。SLTはその中間で、個別検査が終わった複数の半導体を組み合わせた場合、不具合が起きないかどうかを検査するものです。

 具体的には、アドバンテストが顧客要求に応じて「システムレベル・テスタ」を開発し、顧客に販売しています。このSLTの受注高と売上高が増加したことが、「サービス他」の受注高、売上高が伸びている要因です。

 今は、費用が先行している面はありますが、今後は業績寄与が大きくなってくると予想されます。SoCテスタ、メモリ・テスタに次ぐ第3の収益源として注目されます。

グラフ4 アドバンテスト:「サービス他」の受注高、売上高

単位:億円、出所:会社資料より楽天証券作成

3.会社側は2021年3月期通期予想を上方修正した

 今3Qまでの実績を見て、会社側は2021年3月期業績予想を上方修正しました。前回の会社予想、売上高2,750億円(前年比0.3%減)、営業利益525億円(同10.6%減)に対して、今回予想は売上高3,050億円(同10.5%増)、営業利益670億円(同14.1%増)となります。楽天証券予想も会社予想と同じとします。この結果、今4Qは売上高828億円(同21.4%増)、営業利益208億円(同79.9%増)と、今3Q比、前年比ともに大幅増益になる見込みです。

 会社側の暦年ベースのSoCテスタ、メモリ・テスタの市場見通しによると、2021年はいずれも堅調に推移すると予想されます(表6)。実際には、5Gスマホの普及本格化、高性能パソコン、高性能サーバー、新型ゲーム機向けのSoCテスタ、メモリ・テスタの需要増加が予想されるため、会社側の市場見通しよりも強い市場になる可能性があります。また、システムレベル・テストも高い伸びが続くと予想されます。

 この見方に沿って、楽天証券では2022年3月期を売上高3,600億円(同18.0%増)、営業利益890億円(同32.8%増)と予想します。また、2023年3月期も高水準の半導体設備投資が続くと予想されるため、売上高4,100億円(同13.9%増)、営業利益1,100億円(同23.6%増)と予想します。いずれも前回楽天証券予想から上方修正します。

 なお、過去数年間は過去の業績不振時に計上した繰越欠損金によって低い税率が適用されていましたが、繰越欠損金は今期中になくなる見込みであり、来期からは20%台半ばの実効税率になる見込みです。このため、2022年3月期、2023年3月期の楽天証券予想当期利益は、前回予想に比べて下方修正となります。

表5 アドバンテストの事業別売上高

単位:億円
出所:会社資料より楽天証券作成。
注:四捨五入のため合計が合わない場合がある。

表6 アドバンテストの半導体テスタ市場予想

単位:100万ドル、暦年
出所:アドバンテスト資料より楽天証券作成

4.今後6~12カ月間の目標株価は前回の1万2,000円を維持する

 今後6~12カ月間の目標株価は、前回の1万2,000円を維持します。楽天証券の2023年3月期予想EPS 420.5円に成長性を考慮した想定PER25~30倍を当てはめました。

 引き続き中長期で投資妙味を感じます。

表7 アドバンテストの受注高

単位:億円
出所:会社資料より楽天証券作成

表8 アドバンテストの売上高

単位:億円
出所:会社資料より楽天証券作成