政府主導のインフラ投資と不動産市場がけん引役に

 ここからは、「100兆元」「プラス成長」がどのようになされてきたか、そしてその問題点を検証していきたいと思います。これは、先述、問題提起したように、中国経済が真の意味で持続可能な発展を実現していけるかを占う上で重要な作業になります。

 新型コロナの経済への影響を最小限にとどめるため、中国政府は、例年に比べて積極的、大規模な金融緩和と財政出動を行いました。

 例えば、2020年5月に開催された全人代では、2020年の財政赤字目標を GDP 比で3.6%に設定、前年の2.8%から0.8ポイントも引き上げています。2021年にはこれが再び3%以下に下方修正される可能性はありますが、2020年末のレポート「2021年、中国経済成長8%超か。 8つ視点で予測:内需、環境、IT、食糧、不動産・・・」で指摘したように、中国政府は金融緩和と財政刺激策を安易に緩めるつもりはなく、景気の動向を見ながら柔軟に政策ツールを駆使していく姿勢を隠していません。

 実際に、金融緩和であふれたマネーが不動産市場に流れ込み(一部は目下盛り上がっている株式市場にも流れているように見受けられます)、財政出動は政府主導のインフラ投資を後押しし、これらがけん引役となってプラス成長が達成されたと検証できます。

 また、2021年1月18日に国家統計局が発表した2020年の固定資産投資に関する統計を見ると、1~2月の段階で24.5%減だったのが、1~12月では2.9%(前年比で0.3%増)まで回復しています。

 1月19日、国家発展改革委員会が記者会見を開き、趙辰昕(ジャオ・チェンシン)事務局長が、「通年2.9%増という投資の伸びは、新型コロナの影響を有効的に克服させ、経済の持続的な回復に肝心な作用をもたらした」と振り返っています。趙氏によれば、インフラ、製造業、不動産開発といった重点分野の投資に持続的な改善が見られるとのこと。不動産開発は7%増で、全体の2.9%の2倍以上伸びている計算になります。

 さらに趙氏は、「中央政府の財政出動によって放出された資金と要素がプロジェクトに活用されるという原則を堅持したこと、中央の予算内での投資がけん引役を発揮したこと、地方政府特別債券をしっかりつながったこと」が投資成長に貢献したと指摘しています。

 2020年の全人代では、前述の財政赤字設定以外に、インフラ投資向けの地方政府特別債券の発行枠を1.6兆元増の3.75兆元とすること、13年ぶりに特別国債を1兆元発行することなども決定し、実行に移しています。

 新型コロナ禍でさらなる財政難にもがく地方政府からすれば、お上である中央政府からのこれらの政策を後ろ盾に、道路や空港といったインフラ、そして不動産開発への投資を大々的に実行することで、景気の下支え、GDP確保にまい進してきたというのが、「コロナ禍の経済再生」をめぐる実態だったと回顧できます。