2021年の中国経済は、コロナ抑制と経済再生だけでは足りない
ただ、そこには中国経済をめぐる深刻な構造的矛盾が含まれているのです。これに関して、国家発展改革委員会の記者会見に同席した厳鵬程(イエン・パンチェン)総合局局長が示唆に富む指摘をしています。
厳氏は、2021年、金融緩和や財政出動といった政策を全面的に引っ込めるという見方は正しくないこと、経済の平穏で健全な運行を保障するためのマクロ経済政策が急に変更されることはないこと、とりわけ、依然として経営難、資金難に苦しむ市場のプレーヤー、特に中小企業が元気を取り戻すまでは、必要な支持の強度をマクロ経済政策が保持することを確認した上で、次のように問題提起をしています。
「経済の平穏な運行にとって、マクロ経済政策以上に重要なのが、改革とイノベーションだ。昨年以来、新型コロナ対応として、我々はマクロ経済政策の強度を高め、特殊な時期における特殊な措置を打ち出した。これらは経済を安定化させるために重要な役割を果たした。しかし、これら臨時性、救急性を持つ政策が“長久之計”(筆者注:中国経済を長期的に発展させるための施策)になってはならない。経済の回復が常態化する中では、改革とイノベーションの方法を通じて、市場の主体の内部にある原動力を活性化させることで、将来的に起こり得るより複雑な局面に対応していくために、政策的空間を残すべきなのだ」
厳氏は若干えん曲的な表現を用いていますが、要するに、コロナ禍の収束と経済の回復がある程度達成される中で、中国経済の持続可能な発展にとって最大の急務である構造改革を実行していかなければならないと言っているのです。そこには、国有企業と民間企業、そして外資企業の間の公平な競争を保障するための制度改革、市場化、規制緩和などが含まれます。
例えば、2020年の小売売上高は前年に比べて3.9%減っています。8月以降はプラスに転じ、11月には前年同月比5.0%増まで回復しましたが、12月は4.6%増(前年同月比)と再び鈍りました。まさに今後の中国経済のけん引役となるべき消費の分野です。
中国政府も、経済の持続可能な発展を実現するためには、投資や輸出に依存した成長モデルから、内需、消費を生かしたモデルに転換しなければならないと理解しています。そのために不可欠なのが構造改革であり、改革という方法を通じて、雇用を安定的に創出し、国民の所得を向上させ、医療や年金といった社会保障を充実させていかなければならないということです。
その意味で、日本や欧米を含めた多くの先進国は、いまだ新型コロナ抑制に苦しんでいて、経済再生どころではないのかもしれませんが、2021年の中国経済に求められるのは、最近、再び河北省などで感染者が増え、ロックダウン措置も取られている新型コロナの持続的抑制と、コロナ禍経済からのV字回復もあり、8%増前後のGDP経済成長率が見込める経済再生だけではなく、すでに工程表や具体的内容を掲げている構造改革を同時進行で推し進めていくことなのでしょう。