今日の注目通貨

ドル/円: 

 2020年のドル/円の高値(円の安値)は、2月20日につけた112.22円。この時はM&A(企業の合併と買収)のフローがドル/円を押し上げたのですが、ファンダメンタルズ的には日本経済に対する懸念がありました。

 日本の2019年10-12月期GDP(国内総生産)は、前期比年率▲7.1%と大幅に落ち込みました。消費税10%引き上げで消費が大きく冷え込んだことが理由。続く2020年1-3月期は▲2.2%、4-6月期は▲28.1%と3期連続のマイナス成長で日本経済はリセッションに入り。日本経済はもとから悪く、コロナがそれに追い打ちをかけた。政府が給付金を出し渋るのは、そのような理由もあるようです。同時期の米国経済はどうだったかというと、失業率は半世紀ぶりの低さで景気指数も強く、少なくとも新型肺炎の影響もまだ軽微。ドル高/円安に動くのもある意味自然でした。

 ところが、それから3週間足らずのうちに、世界は一気に暗転。新型コロナ感染が急速に拡大し、FRBは3月3日に、約11年ぶりとなる利下げを緊急実施しました。その後3週間のうちに、世界のほぼ全ての中央銀行が追随して利下げや緊急緩和政策を行いました。

 ただ、当時のトランプ政権は、移動制限などの緊急対策には経済にマイナスという理由で後ろ向き。対策の遅れに対する市場の不満と不安が高まるなか、3月9日のNY株式市場は2,000ドルを超える歴史的暴落を引き起こし、ドル/円は101.17円までドル安(円高)が進みました。

 コロナ感染を軽視して初期対策が遅れ、感染の急拡大を許す。慌ててロックダウン(都市封鎖)を行って、経済を一気に止める。今度は経済悪化に焦って、コロナ再拡大のなかで Go To キャンペーンを強引にすすめたかと思えば、またも緊急事態宣言。今起きている経済危機は、世界経済の不均衡ではなく、政策が引き起こしたものだといえます。 

出所:MarketSpeed FXより、楽天証券作成