無人のビーチ

 米国の労働市場は今年6月以来、マーケットが予想していたより170万人も多くの雇用を生み出しています。とはいえ、雇用の回復は一様ではなく、先行きのある企業が採用を拡大する一方で、衰退に向かっている企業は生き残りをかけて大規模な人員カットを断行するか、規模を縮小するか、あるいは運命を受け入れ廃業するかの選択を迫られています。

 ブッキング(Booking=予約)、 エンターテインメント(Entertainment=娯楽), エアー(Air=空旅), クルーズ(Cruise=船旅)、ホテル(Hotel=宿泊施設)など、いわゆるBEACHと呼ばれる業界では、特に新型コロナによる売上の落ち込みが深刻。雇用の構造変化が進むなかで、これらの仕事は消えてしまうリスクにさらされています。世界観光協会は、観光業界全体ですでに1億4,000万人以上が職を失い、観光業に携わる人の二人に一人が失業する日がいずれ来ると悲観的な報告をしています。

 また、低、高スキル労働者の雇用が増える一方で、業種と関係なく中スキル労働者、いわゆるゼネラリストと呼ばれるサラリーマンが不要とされる時代になっています。

 もっとも暗い話ばかりではなく、米国、ヨーロッパや英国では、ロックダウンで外出を制限された若者たちによって一大起業ブームが起きているそうです。ただ、雇用市場が構造変化に対応するにはまだしばらく時間がかかるわけで、それまでの間、政府は従来の失業対策によって支えるしかありません。皮肉なのは、政府の手厚い雇用対策がゾンビ企業を延命させることになり、結果としてゾンビ企業が新しい起業の成長を妨げていることです。