好相場環境だからこそのリスク

「金融緩和+ワクチン+ドル安」の好相場環境が動き出すと、簡単には揺らがないでしょう。したがって、2021年はこの好条件を背景に、相場が速く走り過ぎることもまた警戒しています。好条件過ぎるが故のリスクを、失望、過熱、想定外の三つの観点から五つ取り上げます。

(1)失望:深刻なコロナ変異、ワクチン副反応

 ワクチンが効かない、使えないという事態は、経済正常化の展望を覆しかねません。警戒すべきリスク要因としてはありきたりなことながら、今もまだ正体をつかみ切れていないウイルスが相手であり、慎重を期すべきと考えます。

 単に先行的に開発されたワクチンの一部で効果が乏しいという場合なら、他のワクチンで補うことも、後続ワクチンへの期待もつながるでしょう。しかし、最近英国で報告されたようなコロナウイルスの変異で、万一感染力や毒性に深刻な悪化が確認され、ましてワクチンが効かないとなれば、市場は不安に襲われるでしょう。またワクチンに重篤な副反応が出て、ワクチン接種を急ぐムードが途絶えると、経済回復の想定軌道が変容しかねません。

(2)失望:需要不足に対して政策が効かない

 FRBが、景気回復見通しを強める一方で、金融緩和姿勢を強調する理由は、直面する需要不足の深刻さにあると考えられます。通常の景気サイクルなら、実質GDP成長率が巡航速度+1.8%を下回り始め、やがて2四半期連続で前期比▲0.3%ほどの落ち込みを見せたら、不況だ、リセッションだと大騒ぎになります。それが、コロナ禍ではGDPが一時10%ほど落ち込んだ後、回復してもGDP巡航軌道対比数%ポイントの需要不足が続くのです。だからこそ、不退転の構えで財政・金融政策が講じられるとして相場が沸き上がる一方、FRB当局者は気を緩められずにいます。

(3)過熱:相場の自律反落、人気テーマの罠

 相場環境が良く、分かりやすい相場テーマがあるとき、相場は高く高く突っ走り、含み益を膨らませ、利益確定売りという自律反落の圧力を生み出します。

 2020年4~8月に、コロナ禍でも伸びるグロース株、コロナ禍ゆえのグロース株が囃(はや)された金融相場第1波は、9月に急反落したのも、多分にこの力学によるものです。さらに、分かりやすい人気テーマには資金が集中し、早期に割に合わない水準まで相場を高めるものです。昨今、関心の高い半導体ETF(上場投資信託)など、人気が高いが故に急騰した相場が自律反落し、他の銘柄・業種を巻き込むリスクも排除できません。