新年の世界市場に影響を与える「想定外のリスク」を点検

 図表3では、リスクオン(選好)相場を揺るがす可能性が高い「2021年に向けた潜在リスク」を一覧にしてみました。分類としては、「コロナリスク」、「金利上昇リスク」、「中国リスク」、「欧州リスク」、「地政学リスク」が主な火種として挙げられます。

 12月上旬に欧州系大手投資銀行が世界のFM(ファンドマネジャー)に聴取したところ、「ワクチン期待」を後退させる事象として、
(1)新型コロナウイルスが変異してワクチンが期待通りの効果を発揮しない
(2)ワクチンの接種が進むに従って副作用が顕在化する
(3)多くの一般個人がワクチン接種に消極的となり経済正常化が遅れる

といったリスクを警戒していることがわかりました。

<図表3>新年の「ブラックスワン」を見極める

出所:各種情報や報道をもとに楽天証券経済研究所作成

 1月5日の米ジョージア州上院議会選・決戦投票も注目されています。同投票で決する上院2議席を民主党が制すると、新年は大統領府、下院議会、上院議会を民主党がコントロールする「トリプルブルー」が実現。

 市場は法人増税、富裕層増税、規制強化を警戒する可能性がありそうです。金融当局が供給する過剰流動性で期待インフレ率が想定以上に上昇し、金融緩和政策の「出口」が強く意識されても株価は乱高下しそうです。

 特に債券市場が財政赤字拡大を材料視して「悪い金利上昇」が進む場合、テクノロジー分野を中心とする高PER(株価収益率)株の下押し圧力となる可能性もあります。その他、人権問題を巡り米国と中国が政治的な対立を激化させる、BREXITの余波で英国や欧州大陸の景気低迷が続く、イランの暴発で中東地域の地政学リスクが高まる事態なども相場変動要因です。

 こうしたリスク要因が顕在化して米国株が下落すると、市場心理の冷え込みを反映した外国人投資家の先物売りで日経平均も下落しやすくなります。株式市場のボラティリティ(変動率)が高まるとアセットアロケーション(資産配分)上で株式比率を引き下げる売りが強まる可能性もあります。

 2021年もさまざまな要因で相場が変動する場面を想定せざるを得ません。とはいっても、株式売りが一巡すると、再び堅調トレンドに回帰すると予想しています。2021年の株式相場がコロナ終息後の正常化に向けた過渡期にあると認識しているからです。

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