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「[動画で解説]中国人の資産運用ってどうなってるの?実は、超投資先進国!?」
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マネー事情を知れば知るほど、中国は投資先進国?
皆さん、「理財商品」って聞いたことありますか?
中国国内で販売されている、比較的利回りとリスクの高い資産運用商品を指します。一種の投資信託商品です。融資先の債権を小口化して販売するなどしていて、金融市場をたびたび緊張させてきたシャドーバンキング(影の銀行)の代表的な商品と言えます(中国のシャドーバンキング問題について関心ある読者はこちらの記事を参照ください)。
私も北京滞在中、中国工商銀行に赴いて手続きをする際に、理財商品の購入を勧めるポスターを何度も目にしたことがあり、そこには「30日短期」「45日短期」「利回り6%」「利回り8%」などと記されていました。私自身は株や債券、理財商品を買うことがないので、その体験を語ることはできませんが、周りの知人や、銀行や巷(ちまた)で見かける人々が、自分や家族・親戚の資産を運用することに、命懸けで向き合っているなと常々感じてきました。
そもそも、「理財」という言葉ですが、これは中国語で、文字通り「財産を管理する」、つまり資産運用、ファイナンスという意味です。よく日本では、中国における「理財商品」に言及する際に、「それは投資信託のことだよ」とさっと流しますが、中国で現地の人々とつき合ってきた私から見れば、言葉上の意味は同じでも、その背後に潜む文化や生きざまは異なります。「理財商品」は、数ある金融商品の中の一つの選択肢というだけでなく、もっと重い側面があります。
日本では、社会人になった若者が会社から給料をもらい、それを貯蓄し、ローンで住宅を購入。これも給料のみを原資に返済し、返済しているうちに定年退職し、年金生活に入る、といった「生きざま」が普遍的であるようです。
一方、大多数の中国人は違います。中国でも、将来に不安を覚えるが故に貯蓄を重んじる文化は存在しますが、普通預金、定期預金を含め、その金利の高低に基づいて、一部を理財商品に回したり、株を買ったり、あるいは金融機関や知人からお金を借りて、投資の手段として不動産を購入したりと、リスクをヘッジしながら、マルチベースの資産運用をしているのが一般的です。これは資産運用に長けた人や、金融に一定の知識がある人に限りません。出身、階級、職種、性別、収入、社会的地位などにかかわらず、国民一人がそれぞれの資産運用に取り組んでいます。
私から見て、言葉が正しいのか分かりませんが、中国の人々は総じて「ファイナンスリテラシー」が高いのです。一つの情報や考え方をうのみにするのではなく、疑ってかかり、自分の頭で考え、信頼できる他者に相談し、リスクをヘッジするという思考回路や行動原理が普遍的なのです。この姿には、制度の不公平性や政治リスクなどが存在し、いつ自らの資産が脅かされるか、消えてなくなるか分からない状況下で、自らが貯蓄してきた、あるいは何らかの形で調達した財をいかに守り増やすかという、中国人の生きざまが反映されていると言えるのです。
一寸先は闇。自分の身は自分で守る。
どのように言語化するかは別として、これが中国人にとっての常識であり、資産運用を含めた生きざまにも、それが如実に反映されているということです。
ここからは、私がよく知る3人の中国人に登場していただき、彼ら・彼女らがどのような姿勢で資産運用に取り組んできたのかを、可能な限り詳細に描写します。なお、日本人から見て、「そのやり方は道徳的にどうなの? 法に触れていないの?」といった疑問が浮かんでくる場面もあるかもしれませんが、中国特有のグレーゾーンや国情もあります。ここでは実際の描写を優先することを先に断っておきます。