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 米国の大統領選挙が行われてから既に3週間がたちますが、ここにきてようやく『政権移行』が本格化しようとしています。トランプ大統領は、大統領選挙での敗北を認めず、政権の引き継ぎを拒否してきましたが、23日に『政権移行』手続きの開始を容認しました。今後、バイデン氏らは、最新の機密情報を入手したり、各省高官に公式に接触することが可能となり、新政権が本格的に始動します。

【ポイント1】敗北宣言を行わないトランプ大統領

 米国の大統領選挙では、敗れた候補者が敗北宣言を行い、それを受けて政権の引き継ぎが行われるのが通例です。ただ、今回、トランプ大統領は自らの勝利を主張し、多くの州で法廷闘争を繰り広げ、敗北宣言を行っていません。

 このため、バイデン氏側は、新政権開始の準備を進めることができず、今後の政策の空白期間が懸念されてきました。ミシガン州などの激戦区では、ここに来てバイデン氏の勝利を公式に認定し始めており、トランプ大統領側の法廷闘争は思惑通り進んでいないようです。米経済界も、新型コロナウイルス危機の中での政策の停滞を懸念しており、円滑な『政権移行』を求める声が強まっていました。

【ポイント2】ようやく『政権移行』がスタート

 こういった動きを受けて、23日にトランプ大統領は、『政権移行』の開始権限を持つ政府一般調達局に移行手続きに入る事を認めました。ようやくバイデン氏陣営は高度な機密情報を入手することができる他、政府当局者と新型コロナや安全保障問題等についての協議を始めることができます。

 また、バイデン氏は、主要人事を固めつつあります。まず、23日に外交・安全保障分野の6名の高官を発表しました。国際協調と同盟国との連携の重視や気候変動問題への取り組みの復帰が進められる見込みです。

【今後の展開】『政権移行』を評価し株価最高値も、今後は新政権の政策に注目

 米国では24日、NYダウが史上最高値を更新し、初の3万ドル乗せとなりました。足元、新型コロナの感染再拡大による景気回復の後ずれに対する懸念は残りますが、新型コロナ向けワクチンの開発が進み、実用にめどがついたことや、『政権移行』が進み始めたことが背景となっています。

 財務長官にはFRB(米連邦準備制度理事会)前議長のイエレン氏が起用される見込みです。イエレン氏は、最近、金融政策は既に利下げ余地がなく、財政政策が極めて重要だと追加財政出動を求めています。今後、FRBと連携しつつ、必要に応じた的確な財政政策が行われることが期待されます。