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「[動画で解説]中国「内需」重視へ:新・世界戦略のマーケット影響、3つの注意点」
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中国の15年先までの国家戦略を「解題」

 今回は、中国の国家戦略について書きたいと思います。簡単に言えば、習近平(シー・ジンピン)総書記を核心とする中国共産党が、昨今の内外さまざまな状況や影響を受けて、この国をどのように発展させ、どこへ向かわせようとしているかというテーマです。

 この壮大なテーマを分析する上で手がかりとなるのが、去る10月26~29日、中国・北京で開催された第19期中央委員会第5回全体会議(通称「五中全会」、以下「全会」)です。中国共産党が現状をどう認識し、問題点や解決策をどこに見出すかをマクロ・戦略レベルで理解するという意味で、極めて重要な政治会議です。

 全会では、『国民経済・社会発展第14次五カ年計画と2035年までの長期目標の策定に関する中共中央の提議』を審議・採択しました。第13次五カ年計画の期間に相当する2016~2020年を総括し、次の5年間(2021~2025年)、および2035年までという中長期的な視点から国家戦略や政策方針を固めることを目的としていました。

 ちなみに、「2035年」というのは、中国共産党が定義する「二つの百年目標」(中国共産党結党百周年に当たる2021年と中華人民共和国建国百周年に当たる2049年)における中間地点となる節目の年を意味します。

 全会は、「2035年までに、社会主義の現代化目標を基本的に実現する」と提起した上で、その内訳を次のように説明しています。

「経済力、科学技術力、総合国力を大幅に向上させる。経済総量と都市部と農村部における一人当たりの収入を新たな大台に乗せる。肝心な核心技術の開発において重大な突破を実現し、中国をイノベーション型国家の上位に位置付ける」

 私なりに解釈すると、次のようになります。

 中国の中長期的発展のためには、まずは経済成長が最重要事項である。なぜならそれが中国共産党の正統性を保証する最大の根拠・実績となるからだ。ただそれは国家経済だけでなく、国民経済の成長を伴うものでなければならない。都市部と農村部の格差を縮小しつつ、国民の収入を向上させる経済発展でなければならない。一方で、経済の発展には科学技術の力が不可欠である。5G(第5世代移動通信システム)や半導体、AI(人工知能)やビッグデータの飛躍的発展を含め、民間イノベーションの力を駆使しながら、国家の総合力につなげる。それが結果的に軍事力の充実にもつながり、正真正銘の世界の超大国に成りあがることが可能となる。

 中国にとっての最大のライバルである米国に「追いつけ追い越せ」が目標になっている意識が明確に見て取れるでしょう。