新たな国家戦略の狙いは自立再生

 中国共産党指導部は、コロナ・ショックと米中戦略的対立に見舞われる現状を「世紀の疫病と世紀の変局が重なる中、国際情勢は深い変化を遂げている」(習近平氏のBRICs[ブラジル、ロシア、インド、中国]首脳会議での講演、2020年11月17日)と認識しています。全会は、米大統領選挙の前夜というタイミングで開催されましたが、全会コミュニケの起草に関わった、共産党中央の中で政策研究を統括する最重要機関・中央政策研究室の中堅幹部は、次のように私に語っていました。

「トランプ共和党候補、バイデン民主党候補、どちらが次期大統領になったとしても、米国の対中政策は強硬的なものになるのが必至だ。経済、企業活動、科学技術などを含め、中国として、米国とのデカップリングを前に後手に回るのではなく、主体的に行動すべきだ」

 そんな党指導部の政治的意思を如実に体現しているのが全会公報の中の次の段落です。

「強大な国内市場を形成し、新たな発展の局面を構築する。内需拡大という戦略的基点を堅持し、完全な内需体系の育成を加速させる。内需拡大戦略と供給側構造改革を有機的に結合させ、イノベーションと高質量供給によって新たな需要を創造していく。国内大循環、および国内外の双循環を促進させることで、消費を全面的に促進し、投資の空間を開拓していく」

 これこそ、ポスト・コロナ・ショック+米中対立というニューノーマル(新常態)の中で、中国共産党が持続可能な経済成長を実現するために考案した新たな国家戦略です。

 最大のキーワードは「国内大循環」。

 新型コロナ発生後、習近平政権として新たに創造した、今後、中国経済の柱になっていく概念です。

「世紀の大変局」という現状認識の下、コロナ・ショックは数年で緩和・回復できるとして、共産党指導部が真に警戒するのが、やはり米国の動きです。米国が経済、科学技術、企業活動、軍事を含め中国を総合的に封じ込めようとしている、デカップリングはそのための策略であり、中国をサプライチェーンとグローバル市場から締め出そうとしていると本気で警戒しているのです。

 米国から封じ込められ、国際的にも孤立する局面が現実化したときに備えて、供給と需要、食料とエネルギー、市場と資本、人材と技術力といった分野で自力再生できるように、発展の方向性を国家戦略という次元で軌道修正した、それが「国内大循環」だというのが私の理解です。