中国がマーケットに及ぼす今後のインパクト:3つの注意点

 最後にマーケットへのインパクトを考えてみます。3点指摘します。

 一つ目に、新型コロナ抑制にもがく他の主要経済体に比べて、中国経済が、李克強氏が言うところの「回復的成長」を見せていること、今年のプラス成長は確実で、来年のV字成長も期待できることは好材料だと言えるでしょう。

 二つ目に、「世紀の大変局」を受けて、中国経済全体として外部依存度を下げ、内需拡大に尽力するという戦略を主体的に打ち出したことも合理的な選択だと言えます。個人消費によってけん引される経済成長は、中国の「世界の市場」としての価値を上げ、欧米や日本の企業にとっても、より吸引力のあるマーケットとなるでしょう。

 三つ目に、「国内大循環」というある意味“内向き”な戦略を掲げる中で、外国の政府や企業が継続的に関心を持ってきた構造改革がどこまで進むか、対外開放が後退するか否かは焦点であり、リスク要因とも言えます。

 例えば、10月、中国の議会に当たる全国人民代表大会常務委員会が「輸出管理法」という法律を成立させました。貨物、技術、サービスなどの輸出管理が強化されます。「デュアルユース品目、軍用品、核に加え、国家安全と利益の擁護、拡散防止など国際義務の履行にかかわる、貨物、技術、サービスなどの品目」に輸出管理が適用されるとしています。習近平第2次政権発足以降、党・政府は国家安全や国益を守るという「大義名分」の下、民間交流や国境を越えたビジネスへの介入や監視を強めています。「内需重視」が「外資軽視」を誘発しないことを祈りつつ、引き続き政策や情勢を見極める必要があると考えています。