ワクチン成功でどうなる?

 ファイザー社開発中のワクチンの朗報は、もし1週間早く発表されていたら、米大統領選挙の結果を変えたかもしれません。その意味でも世界を左右するタイミングの公表でした。ワクチンの成功を祈りつつ、コロナ克服の展望が開けた場合の経済・政策、投資のこれからを考えます。

 もちろん、さらに広範なタイプの人々への効果と副反応、効果の持続期間などの検証、コロナウイルス変異への対応などハードルはあり得ます。ファイザー社開発中のメッセンジャーRNAワクチンは、市場の一般的な事前評価では、相対的に安全性が高く、量産も可能ながら、効果は果たしてどうか…というものでした。それだけに、その効果が確認されたとなると、がぜん期待も高まります。

 このワクチンが成功し、順調に普及に向かう場合でも、当面は北半球の冬期におけるコロナ感染拡大との戦いを控えています。同時に、コロナ禍からの経済活動再開に伴う回復が鈍化する場面と重なる見込みです(図表1、影部分)。主要国当局は、この正念場を乗り切り、ワクチン普及期へつなぐべく、政策対応へ臨戦態勢でしょう。市場では、経済の二番底への陥落阻止に動く政策対応を横目に、中長期でのワクチン普及による経済正常化の軌道を思い描きつつ、投資の対応を考えていく場面です。経済正常化の初期には、割安な景気株の見直し買いがなされ、他方で、グロース株相場の反落がリスクとして注視されます。景気回復の具体化初期には、株式が長期金利上昇を嫌気する場面も一時的にはあり得ます。こうした紆余(うよ)曲折を経ながら、中長期ではやはりグロース株優位が再認識されると判断しています。

図表1:経済は「レ~」字回復の正念場へ

出所:田中泰輔リサーチ