※本記事は2014年4月4日に公開したものです。
三種類の「運用」
はじめに問題を一つ考えて欲しい。「年金基金が、JPX日経400にトラックすることを目指す運用を運用会社に委託する行為は、アクティブ運用か、パッシブ運用か?」。ついでに、もう一つ。「これを受託した運用会社にとって、この運用は何運用か?」。
最初の問題は、アクティブ運用が正解だ。年金基金は、通常、「国内株式」というアセット・クラス(資産分類)のベンチ−マークとしてTOPIX(東証株価指数)を使ってアセットアロケーションを考えている。JPX日経400は、TOPIXとは構成銘柄も銘柄毎の投資ウェイトも異なる指数なので、年金基金としては「これは、アクティブ運用だ」と認識して運用を委託するのでなければならない。
しかも、運用を委託した時点で、銘柄選択と投資ウェイトのルールを選択していることになるから、年金基金は日本株のアクティブ運用者と同じ意思決定をしていることになる。
年金基金に国内株式運用のプロはいるのか、また、そもそもJPX日経400がどのようなポートフォリオか、分かって運用委託しているのかどうかが心配になるが、「JPX日経400にトラックする運用で」と彼らが運用方法を指定した瞬間に、年金基金はアクティブ運用の責任を負ったことになる。
尚、ついでに指摘しておくが、インデックスの銘柄入れ替えを一度も経験していない今の段階でJPX日経400に投資している年金基金があるとすれば、それは、年金運用者として軽率で、無責任だと言い切ってよい。(注;個人が「自分のお金」でこの指数のETFなどに賭けるのは自己責任で完結できるので構わない)
そして、少々複雑だが、この運用は同時にインデックス運用でもある。インデックス、即ち株価指数をベンチマークとして、このパフォーマンスの複製を目指す運用なので、インデックス運用だ。
それでは、年金基金から運用を受託した運用会社にとってはどうか。運用会社がやることは、ベンチマークであるJPX日経400の構成銘柄と投資ウェイトをポートフォリオに再現し維持する事なので、パッシブ運用だという理解でいい。そして、ベンチマークが同時にインデックスなので、インデックス運用でもある。
「アクティブなインデックス運用」と「パッシブなインデックス運用」があり得るということだ。パッシブであるか、アクティブであるかは、ベンチマークとの差を意図的に作るか否かにある。
機関投資家の運用にあっては、ベンチマークからの乖離リスクである「アクティブ・リスク」を意図的、計画的に管理しなければならない。一つの資産クラスにあって複数のベンチマークを使い分ける場合は、資産クラスを代表するベンチマークと、個々の運用会社に与えたサブ・ベンチマークとの間のリスクを管理しなければならないし、加えて、サブ・ベンチマークと実際に運用されているポートフォリオのアクティブ・リスクを管理しなければならない。アセット・アロケーションに使うベンチマークと、個々の運用委託の際に与えるベンチマークとを異なるものにすると、管理が複雑になる。