長期・短期で、“有事のムード”が金相場を支える。ドル高でも、上値を目指す材料はある

 目下、金相場の上値を抑えているのは、ドル高だと考えられます。主要国通貨に対するドルの総合的な強弱を示す“ドル指数”は、反発傾向を強めています。欧州のコロナの感染再拡大により、ユーロが弱くなっていることが主因です。

 金市場には少なくとも5つのテーマが存在すると筆者は考えています。「代替通貨」はその中の1つで、例えばこのテーマの最重要要素であるドルの動向において、“ドル高”であれば金に下落圧力がかかり、“ドル安”であれば上昇圧力がかかると、考えられます(※下図の(3)を参照)。

図:足元の金相場の環境

出所:筆者作成

 数あるコモディティ(商品)銘柄の中でも、金(ゴールド)は変動要因が多岐にわたるため、材料を点で見てはいけません。世界中でこんなにコロナが拡大して不安が広がっているのに、なぜ金相場が下がっているのか? と疑問を持つ方もいるかもしれませんが、その答えはシンプルです。

(1)前提として、金市場には少なくとも5つテーマがある。→有事だけが金市場の変動要因ではない

(2)5つのテーマが市場に常に別々に作用しており、影響力が相殺され、価格が決まっている。→有事で上昇圧力がかかっても、別のテーマでそれを相殺するだけの下落圧力がかかれば、価格は下落する。

 金市場の変動を考える上で、このようなメカニズムを理解することは必要不可欠だと、筆者は考えています。目先は、ユーロ安を主因としたドル高によって、金相場は上値を抑えられる場面があるかもしれませんが、ドル高が弱まれば、短期・長期両方の有事のムードの影響力がドル高の下落圧力を相殺し、反発色を強めると考えています。

 そうなれば、年内あるいは、年明けの早い段階で、2,000ドル回復を実現する可能性もあると、みています。

図:NY金先物 単位:ドル/トロイオンス

出所:マーケットスピードⅡより筆者抜粋