2.ASML ホールディング
1)ASMLの2020年12月期3Qは、22.5%増収、77.3%営業増益
ASMLホールディング(アムステルダム、ナスダック上場、ティッカーシンボルはASML)は半導体製造工程で不可欠の露光装置の最大手です。7ナノ半導体から一部導入され、5ナノから本格的に導入されているEUV露光装置では世界シェア100%の会社です。
ASMLの2020年12月期3Q(2020年7-9月期)決算は、売上高39億5,800万ユーロ(前年比32.5%増)、営業利益12億1,600万ユーロ(同77.3%増)となりました。前年比でも、今2Q(2020年4-6月期)の売上高33億2,600万ユーロ(同29.5%増)、営業利益9億500万ユーロ(同82.8%増)と比較しても好調な業績でした。
今3Qは、EUV露光装置の販売台数が14台と、前3Q7台、今2Q7台に対して大幅に増加しました。このうち、今3Qに出荷、検収されたものが10台(顧客工場において動作検査がなされた後に売上計上となる)、今2Qに出荷されたが、新型コロナの影響で検収が今3Qにずれ込んだものが4台ありました。
システム売上高(製品売上高)に占めるEUV露光装置の比率は、前期31%(ArF液浸は53%)、今1Q22%(同52%)、今2Q39%(同41%)、今3Q66%(同21%)と上昇しています。今期からはEUV比率が他機種の比率を上回ると思われます。
EUV露光装置の販売平均単価は、2019年12月期の1億700万ユーロ(約132億円)から大幅に上昇して1億4,600万ユーロ(約180億円)となりました。スペックやオプション装備の違いによると思われます。
今3QのEUV露光装置を含む露光装置全体の地域別売上構成を見ると、台湾47%、韓国26%、中国21%、アメリカ5%、欧州その他1%となっています。2019年12月期通期では台湾51%、韓国16%、アメリカ16%、中国12%、日本3%、欧州その他2%となっています。これを見ると、EUV露光装置の最大手顧客は台湾のTSMC、次に韓国のサムスン、アメリカのインテルが続くと思われます。ASMLは中国にはEUV露光装置を輸出していないため、中国向けは1世代以上前のArF液浸、ArFドライ、KrFなどと思われます。
露光装置売上高のロジック、メモリ向けの比率は、今3Qはロジック79%、メモリ21%でした。2019年12月期はロジック73%、メモリ27%、2018年12月期はロジック45%、メモリ55%でした。今後EUV売上比率が過半数になると思われること、最先端ロジック向け設備投資が伸び続けるであろうことを考えると、ロジック向けが過半数を占める状況が続くと予想されます。
表4 ASMLホールディングの業績
2)今3QのEUV露光装置受注台数は4台に止まった
今3QまではEUV露光装置販売台数の伸びがけん引して売上高は好調でした。今期のEUV販売台数は、会社側では35台としています(前期は26台)。会社側では来期のEUV露光装置販売台数を今期比20%増(42台)としています。年間生産能力が45~50台なので、そろそろ生産能力に余裕がなくなってくる可能性があります。
一方、受注台数は低迷しています。EUV露光装置の受注台数は、前2Qから今1Qまで好調でしたが、今1Q11台、今2Q3台、今3Q4台となっています。ただし、TSMCの業績好調、サムスンが5ナノラインの構築を急いでいるというニュースもあるため、来期には再び受注が回復、増加すると予想されます。
グラフ4 ASMLのEUV露光装置:受注台数と販売台数
グラフ5 ASMLのEUV露光装置:受注台数と販売台数
3)来期はEUVがけん引し増収増益へ
会社側では、世界経済に新型コロナウイルス感染症や米中摩擦などの不透明要因があるとしながらも、来期2021年12月期のEUV露光装置販売台数を今期比20%増としています(42台)。そして、全体の増収率を二ケタ増の低いほう(10~15%増)としています。
一方で、世界経済に不透明要因が多い中でもTSMCの業績好調という良いニュースがあります。先端半導体の市場は順調に拡大中と思われます。
そのため楽天証券ではASMLの業績を、今期2020年12月期は売上高135億ユーロ(前年比14.2%増)、営業利益38億ユーロ(同36.2%増)、来期2021年12月期は売上高155億ユーロ(同14.8%増)、営業利益47億ユーロ(23.7%増)と予想します。EUV露光装置を主軸に順調な業績拡大が予想されます。
今後6~12カ月間の目標株価をアムステルダム400ユーロ、NASDAQ 470米ドルとします。2021年12月期楽天証券EPS予想 9.54ユーロに成長性を評価した予想PER40~45倍を当てはめました。中長期での投資妙味を感じます。