売り逃げ成功がもたらす買い場

 米株式相場が復調し、金融相場第2波の軌道を固めようとしています。筆者は、一度相場の流れに乗ったと判断したら、それが反転するリスク要因へ意識を集中します。相場の流れを止め得るリスクが大きく現れない限り、投資ポジションの保持を引っ張るアプローチです。この方法は、相場上昇で儲(もう)けが出ると慢心が生じて相場監視の目が曇りがちというワナに陥らないための工夫です。そのアプローチに基づいて、8月中の相場上昇時には秋の波乱への警戒、9月の相場調整中は復調の兆し、10月に復調すれば当面のリスクと、「転ばぬ先の杖」として取り組んでいます。

 一方で、「転ばぬ先の杖」は、次の相場の活路を開く術です。相場はどこまでも続き、トレンドと調整反落を繰り返します。そして投資には、短期・中期・長期とさまざまな時間軸での視座があります。このことから、通常起こり得る現象として、相場にトレンドが続けば、それが売り場を生み、調整が続けば、それが買い場を生むと考えます。現状に照らして言い換えると、この金融相場という上昇トレンドの中で、短期相場のアヤのような売り場があれば、その後には短期、中期、長期の全ての投資家にとってより良い買い場が来るという認識です。

 図表2はそれをイメージ化したものです。上述の10~12月の相場「小局」での売りは、2021年への金融相場「中局」に軸足を置く投資家にとっては、より良い買い場になるでしょう。「中局」狙いの視座からは、「小局」の相場の振れなど気にせず、淡々と時間分散で投資を続けることでも構わないということになるでしょう。

図表2:米株式の「小局」~「中局」売買イメージ

出所:田中泰輔リサーチ