<前回までのあらすじ>
タケル ボクは26歳の営業マン。会社を作って、尊敬するジェフ・ベゾスみたいな大富豪になりたい! どんな会社が稼げるかウオッチする目的と、起業資金を増やすために株式投資をはじめて3年。だけど今、持っている株式のほとんどが売り時を逃して、下がりっぱなし。伸びそうなR株を見つけたのに、資金があと少し足りない……。
――こんな悩みを抱えたタケルは、「信用取引はじめて道場」に通い始める。そして、信用取引口座の開設が完了。ついに取引を始めた。
信用貸株ってシェアリングエコノミー?貸株との違いは?
タケル ドーシタ師範、楽天証券で「信用貸株」が9月23日からスタートしたそうです。これってなんでしょうか。
ドーシタ師範 うん。タケルは信用取引をするために、自分のお金を担保にしたと思う。この他に担保として使うことができるのが、自分の持っている現物株式だ。これを代用有価証券と言う。代用有価証券には、株だけでなく、投資信託、債券なども使うことができる。
タケル 現金だけじゃなく、株式なども担保になるのですね。
ドーシタ師範 そうだ。そして、代用有価証券として差し入れている株式を貸株して金利収入を得ることができるのが、信用貸株だ。
タケル 担保で預けているのに、金利収入も? それって信用取引で投資する人にとって、いいとこ取りじゃないですか? ところで、そもそも貸株……ってなんですか。株を貸す?
ドーシタ師範 貸株とは、自分が持っている現物株式を楽天証券に貸し出して、貸株金利がレンタル料として入ってくるのだ。
だから、持っている株式を担保として使いながらも、通常の貸株と同様に金利を得られるのは大きなメリットと言えるな。信用取引でレバレッジの取引をしつつ、その担保にしている代用有価証券も生かす、一石二鳥かもな。
信用貸株は本当に一石二鳥?
タケル でも、メリットがありすぎるような。何か落とし穴があるんじゃないですか。そもそも代用有価証券を貸株したら、証券会社は担保がない状態じゃ…大丈夫なんですか。
ドーシタ師範 いいところに目をつけたな。信用貸株では、通常の貸株より得られる金利が低くなる。
代用有価証券は通常、その株価(時価)の80%相当額を保証金額と見なし、信用取引ができる仕組みだ。一般的に考えれば、この代用有価証券を信用貸株すれば、保証金額から計算される信用余力、つまり担保としての力は低くなるだろう。でも、この低くなった信用余力を楽天証券が補う手間料があるため、信用貸株の金利は通常の貸株より低いのだ。
タケル なるほど。でも、代用有価証券が値上がりして売りたくなったとき、信用貸株をやめる手続きに時間がかかったりするでしょう? ちょうどいいタイミングを逃すデメリットがあるんじゃないですか?
ドーシタ師範 代用有価証券にしている現物株を売りたくなったら、特別な手続きは必要ない。タケルの都合の良いタイミングで、いつでも売却・現渡し(げんわたし)ができるのだ。そういえば、現渡しという言葉ははじめて登場したな。
現渡しとは、文字通り、現物株を証券会社に受け渡して、信用取引を終了(決済)することだ。これは何かといえば、信用取引で売りから入った建玉は、通常なら株を買い戻して返却する。これをせずに、自分の保有する現物株を使って返却して、決済させる。現渡しの仕組みについては、また時を改めて教えるから、今は完全に理解しなくてもいい。