2)2020年10-12月期以降は7-9月期以上の売上高になる可能性がある

 10-12月期もTSMCの売上高は増え続けると思われます。重要なポイントは以下の通りです。

  1. 新型iPhone向けチップセット:Apple Eventが10月14日(水)午前2時(日本時間)に開催されます(アップルのウェブサイトからオンライン配信されます)。おそらく、新型iPhoneの発売日、機種別の詳細と価格、仕様、テクノロジーの中身、新しいサービス等が発表されると思われます。iPhoneは過去3年間売上が振るわなかったため、逆に新型iPhoneは更新需要が多くなるという観測がでています。もしそうなら、10-12月期、2021年1-3月期にTSMCのiPhone向けが計画以上に盛り上がる可能性があります。
  2. 新型ゲーム機(PS5、Xbox Series X/S)向けCPU、GPU:TSMCが7ナノラインで新型ゲーム機向けCPU、GPUをどの程度まで生産できるかが今後の焦点です。特にPS5は今期から来々期ぐらいまでTSMCのCPU、GPU生産数量がそのままPS5の販売台数となる状況(即ちTSMCがチップを作れば作っただけ売れる状況)が続く可能性があります。想定される需要層は、まず約1億人いるPS4ユーザー、eSportの競技人口1億人以上と視聴者4億人以上、巣ごもり特需(楽天証券の推定で最低8,000万台、最大2.5億台。2020年3月期の家庭用ゲーム機販売台数は推定約4,000万台強。楽天証券投資WEEKLY2020年8月28日号参照)の中でも昔ゲームに熱中したことがあるが、しばらくゲームから遠ざかっていた人たちでPS5の美麗で動きの速い画面と価格の安さに関心をもった人たち、などです。
  3. 高性能パソコン向け、高性能サーバー向け:AMDのパソコン向け、サーバー向け7ナノCPU、GPU、エヌビディアのサーバー向けGPU(例えば、今年5月発売の最新鋭の高性能GPU「A100」。TSMC7ナノラインで製造)が注目されます。
  4. 5Gスマホ向けチップセット:後述のサムスンの5Gスマホの好調が、市場の好調にもよるものならば、(スマホビジネスを失いつつあるファーウェイを除いて)、サムスンだけでなく、アップル、シャオミ、オッポなど他のスマホ大手にビジネスチャンスがあるはずです。TSMCのスマホ向けチップセットビジネスには引き続き注目したいと思います。

3)TSMCの2020年12月期3Q決算に注目したい

 TSMCは、10月15日(木)に2020年12月期3Q(2020年7-9月期)の決算発表を行います。焦点は、10-12月期以降の生産販売をどうみているのか、特に5ナノ、7ナノの最先端品の動きと、設備投資の動きです。

 5Gスマホだけでなく、高性能パソコン、データセンター向けサーバー、新型ゲーム機向けのCPU、GPUの需要が活発で、かつ、企業間競争、ゲーミングPC対高性能ゲーム機の競争など企業間、製品間にまたがる重層的な競争が激しくなっているため、生産ラインの増強を続ける必要があると思われます。ビッグノード(生産能力の大きな微細化世代)と言われる5ナノだけでなく、新型ゲーム機、廉価版5Gスマホ用、ゲーミングPC用、データセンター用CPU、GPU用に大きな需要が予想される7ナノ、差別化のためにひたすら最先端を目指すニーズを満たすための3ナノ(2022年稼働開始予定)も大きな生産能力が必要になる可能性があります。

 例えば、3ナノについては、需要が大きいと予想されるのが5Gスマホの完全フルスペック版(高速送受信、低遅延、同時多接続)向けチップセットですが、これだけではなく、例えばPS5が大成功すれば、3年後に3ナノCPU、GPUを搭載したPS5の「Pro」バージョンが発売される可能性があると私は考えています。もしそうなれば、ゲーミングPCも3ナノCPUを搭載して追随するでしょう。

グラフ3 TSMC:四半期設備投資

単位:億米ドル、出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ4 TSMCの年間設備投資額

単位:億米ドル、出所:会社資料より楽天証券作成