毎週金曜日夕方掲載
本レポートに掲載した銘柄:東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)、レーザーテック(6920)、ディスコ(6146)、 SCREENホールディングス(7735)
1.TSMCの9月売上高は前年比24.9%増。過去最高を更新した。
1)ファーウェイ向け消失への心配は、少なくともTSMCに対しては杞憂だった
今回の特集は、半導体製造装置株のフォローアップです。TSMCの9月売上高、サムスンの2020年12月期3Q(2020年7-9月期)決算速報、SMICに対するアメリカ政府の規制を分析します。
2020年10月8日公表された2020年9月のTSMCの月次売上高は、1,275億8,500万台湾ドル(1台湾ドル=3.70円、0.03USドル)(前年比24.9%増、前月比3.8%増)となりました。8月の前年比15.8%増から前年比が再び回復しました。9月売上高は8月に続き過去最高を更新しました。
また2020年7-9月期売上高は、今2Q決算発表時の会社側ガイダンスである3,304~3,392億台湾ドルを上回る3,564.3億台湾ドル(前年比21.6%増)となりました。
アメリカ政府の対中輸出規制の骨子は以下の通りです。
- アメリカ製の技術を用いたサービスをファーウェイに提供するには、商務省の許可を必要とする。
- アメリカ以外の国の企業であっても、アメリカ製部品の割合が25%以上の製品の場合は規制対象となる。
- アメリカ国外において、ファーウェイや関連企業の設計に基づいてアメリカ製の製造装置を用いて生産された半導体製品の輸出も許可制とする。
この結果、2020年9月15日からアメリカ製の半導体とアメリカ国外の国の半導体はファーウェイに出荷できなくなりました。9月14日までは駆け込み需要があったと思われますが、9月15日からは一部許可を受けた半導体を除いては(インテル、AMD製のパソコン用CPUの中で、高度なものでないものがアメリカ政府の輸出許可を受けたと思われる)、輸出できなくなりました。TSMCのファーウェイ向けも9月15日からは出荷停止です。
そのため、9月の売上高がどの程度になっているのかが注目されてきました。実際には、9月には最先端の5ナノラインにおいてアップルの新型iPhone向けチップセット(スマホのCPUの周辺半導体を組み合わせたモジュール)の生産をすでに開始していると思われます。人気の7ナノラインでは、中国スマホ大手向けの5Gスマホ用チップセットだけでなく、AMD向けのパソコン、サーバー向けCPU、GPU、エヌビディアの最新型サーバー用GPU、そしてソニー、マイクロソフトの新型ゲーム機(PS5、Xbox Series X/S)向けCPU、GPUなどの大型製品の量産でフル生産になっていると思われます。
過去の報道ではTSMCの売上高の約15%がファーウェイ向けだったもようです。これが欠けた分は埋め合わせられると思われてきましたが、一方で株式市場では実際に9月売上高を見なければ安心できないという見方もあったと思われます。
蓋を開けてみれば、心配は杞憂でした。ファーウェイ向けがなくなった穴は埋め合わせがついて、おつりがくる状況でした。