個別株投資2つの悩み
筆者は、ここのところ個人に対して提案できる個別株投資のポートフォリオで「趣味」と「合理的資産形成」を両立させる方法を模索している。
率直に言って、インデックスファンドに投資するのと、個別株に投資するのとでは、ポートフォリオの価値に大差がある。まず、投資家にはこの点を理解して欲しい。
投資家から見た価値を表す効用関数の一般的な形は、U=r−λσ2だ。rは期待リターン、λはリスク拒否度、σは標準偏差で測ったリスクで、効用関数では2乗して分散で評価される。細かな計算は省くが、r=5%、σ=20%で、元本に対する100%のリスク資産投資がちょうど最適な投資家のリスク拒否度は0.00625だ。
仮に、インデックスと個別銘柄の期待リターンが共に5%だとして、インデックスのリスクが20%、個別銘柄のリスクが30%とすると、インデックスファンドへの投資は年率+2.5%相当の効用で、個別株1銘柄への投資は-0.625%となる。期待リターンが8.125%ある銘柄に投資できたらリスクの悪影響を克服できる計算だが、大まかに言って世の中の個別株のリターンの平均を5%だと考えなければならないのだから、それは容易ではない。しかも、リスクの30%は個別株としては「おとなしい方の数字」だ。もっとリスクの大きな銘柄が多数ある。
個別株の投資では早急に分散投資したポートフォリオを作らなければならないことが明らかだ。
従って、個別株投資をこれから始めようとする個人に対して、筆者は、
- まず、最初から業種の異なる3銘柄以上に投資して下さい、
- 次に、追加の資金ができたら自分が持っていない銘柄に投資して分散投資を拡大しましょう、
と勧めることにしている。
個別株式への投資は「奥の深い良い趣味」だと思うのだが、これを「合理的な資産形成」と両立させるためには、分散投資の利用が必須だ。効用関数を考えると、分散投資が不足することによって損なわれる効用が「趣味のコスト」となる計算である。
だから、最初から分散投資を意識して、「ポートフォリオ」の単位で株式投資を考えて欲しいという意味で「3銘柄以上から」と申し上げている。
すると、個人の場合、「十分な分散投資を行う資金がない」場合が生じてくる。せっかく株式投資に興味を持ったのに、「まとまったお金ができるまで、投資を始められない」と思って行動を起こさず、その後うやむやになってしまうようなケースは残念だ。
また、仮に3銘柄で始めることができても、銘柄を追加する資金を計画的に捻出する仕組みを作らないとポートフォリオが育たない。