iDeCo、つみたてNISAとの関係

 インデックスファンドからのリレー投資で個別株運用を行うとする投資家にとって、この方法と、iDeCoやつみたてNISAとの関係をどう考えたらいいのだろうか。

 まず、iDeCoは口座内で積立投資ができるのだが、原則として60歳まで資産を引き出せないので、ここで説明したリレー投資とは両立しない。加えて、iDeCoの場合、課税される所得のある人は、掛け金を所得控除できるメリットが大きいので、これを利用しないことは「かなり勿体ない」。iDeCoに資金を回さずに、リレー投資を行うとすれば、iDeCoで得られるはずのメリットを放棄する金額(経済学用語では「機会費用」)を「趣味のコスト」に算入しなければならない。

 趣味への評価は人それぞれなので、「だから、止めろ」とまでは言わないが、iDeCoを使わないことの経済的コストが大きいことは指摘しておくのが正しい親切というものだろう。

「iDeCoを最大限利用した上で、さらに個別株投資ができるといいね」と声がけするのが筆者の立場では無難なのだが、個別株投資の仲間を増やしたい気持ちからすると、これでやる気を失う投資家がいると思うといささか残念だ。

 もっとも、個別株投資をするためには、ある程度余裕がある人の方がいいのも一理ある考え方だ。総合的に考えて、iDeCoに優先席を譲るのは仕方がないのかも知れない。

 つみたてNISAとの比較も少々微妙だ。リレー投資の積立につみたてNISAの口座を使うことで直接的に損はしない。むしろ、短期間の積立でも利益が出ていた場合に非課税のメリットが生じる。

 しかし、つみたてNISAは、解約してしまうとその金額分の非課税運用メリットを放棄することになる。仮に、期待リターンを年率5%と考えると、課税が2割として年率1%相当のメリットを放棄することになり、これもそれなりの機会費用だ。また、20年間の複利運用の利益に対する非課税メリットを放棄するのだと考えるとまた一段と惜しい気持ちになる。

 こうした比較が問題になる経済事情の投資家の場合、個別株投資は、「あくまでも趣味として」お勧めするのがいいのかも知れない。

 一方、ある程度以上の金額のポートフォリオを作ることができるなら、個別株投資のポートフォリオは、インデックス投資に対して大きな遜色のないポートフォリオを作ることが可能だし、インデックス銘柄の入れ替えやウェイト変更で損をする可能性を心配しなくていいし、信託報酬も掛からない。加えて、もちろん「趣味としても楽しめる!」とも申し上げておこう。