相関係数:イーサリアムは、貴金属、原油、天然ゴムと、比較的強い相関関係にあった

 相関係数は、2つの対象物の関係性を数値化したもので、+1と-1の間で決まります。+1に近ければ、2つの対象物の関係は正(連動するように動いていること。相関)、-1に近ければ、関係は負(正反対に動いていること。逆相関)、0に近ければ2つの対象物は、関りがないこと(無相関)を意味します。

 相関係数の見方は、以下のとおりです。

 0~+0.3(-0.3):ほぼ無相関
+0.3~+0.5(-0.3~-0.5):弱い相関あり(逆相関あり)
+0.5~+0.7(-0.5~-0.7):相関あり(逆相関あり)
+0.7~+0.9(-0.7~-0.9):強い相関あり(強い逆相関あり)
+0.9以上(-0.9以下):非常に強い相関あり(非常に強い逆相関あり)

 以下は、2020年9月1日から25日の、ビットコイン、イーサリアムと、他の銘柄の相関係数です。

図:ビットコイン、イーサリアムと、各種銘柄の相関係数 (2020年9月1日から25日)

出所:楽天ウォレット、マーケットスピードⅡなどのデータをもとに筆者作成

 この期間、イーサリアムは、金と銀、原油、天然ゴムと、比較的強い相関関係にありました。イーサリアムとこれらの相関係数は、強い相関があることを示す、+0.7を超える高い値でした。イーサリアム、金、銀は、無国籍資産の中でも、無国籍通貨という同じカテゴリの銘柄であるため、比較的、値動きが似ることがあります。

 しかし、イーサリアムは、原油、天然ゴムと異なり、資源や一次産品ではありません。このため、金と銀のように、同じカテゴリであるために、価格の推移が似通った、という説明は難しいと思います。

 イーサリアムと、天然ゴムと原油の相関係数が比較的高かった点については、“幅広い市場の価格動向における、大きな流れ”を意識することで説明できると、筆者は考えています。

 例えば9月1~25日の期間、序盤にアップルなど米国のハイテク株が急落し、後半に、そのハイテク株は反発しました。ハイテク株の急落と反発は、それらを構成銘柄の一部とした米国の主要株価指数(例えば、NYダウやS&P500、ナスダックなど)の急落・反発の要因になります。

 そして、米国の主要株価指数の動向は、世界全体の景気動向の今後の見通しを左右する要因になり得ます。この一連の流れは“幅広い市場の価格動向における、大きな流れ”を作る源泉と言えます。

 世界全体の景気動向の今後の見通しに変化が生じれば、景気動向に反応する傾向がある原油や天然ゴムの価格も、影響を受けることがあります。ハイテク株の急落・反発は、間接的に、原油や天然ゴムの価格に影響を与えるわけです。

 9月上旬に起きたハイテク株の急落の際、実は、無国籍通貨であるビットコインと金も下落していました。資金の逃避先とならず、リスク資産と同様に、無国籍資産が売られたことを考えれば、9月上旬は、幅広い市場で、今年2月から3月にかけて発生した“新型コロナショック”のような、資産の現金化(リスク資産を売却してドルを保有する動き、ミニショック)が、一時的に発生したと言えます。

 全体的には、9月上旬にハイテク株の下落をきっかけに幅広い市場が売られ、その後9月下旬にハイテク株の反発によって、上旬に下落した銘柄が回復した、という流れです。この流れの中には、イーサリアムも、天然ゴムも、原油もあり、結果として、イーサリアムとこれらの相関係数が高まったと、考えられます。

 つまり、イーサリアムと、原油、天然ゴムの相関関係が強まったのは、“幅広い市場の価格動向における、大きな流れ”という共通の材料が強く影響を及ぼしたため、と言えると思います。共通の材料を介して相関関係が強まる、疑似相関の一種だったと言えるでしょう。このような動きは、9月だけでなく、今年に入ってからも、しばしば、見られています。

図:イーサリアムと天然ゴムの価格推移 単位:円(天然ゴムは1キログラムあたり)

出所:楽天ウォレットおよびブルームバーグのデータより筆者作成