騰落率:暗号資産、貴金属の下落が目立ち、株価指数が上昇
まずは、9月1日(火)から25日(金)までの騰落率を確認します。この間、最も上昇率が高かったのは、マザーズ指数でした。日経225もプラス圏だったため、主要株価指数の上昇が目立った、と言えます。
図:ビットコインとイーサリアム、各種銘柄の騰落率
※2020年9月1日(火)と25日(金)の終値で計算
一方、暗号資産と貴金属は下落しました。暗号資産のうち、ビットコインは-11.9%、イーサリアムは-28.8%、貴金属では、金が-6.1%、そして銀が-19.4%でした。下落した暗号資産と貴金属の中でも、暗号資産はビットコインよりもイーサリアム、貴金属であれば金よりも銀の下落が目立ったわけです。
前月の本記事『ビットコイン先物の取組高急増。“無国籍資産”需要増大?』で、暗号資産と貴金属を、“無国籍資産”と書きました。株式や通貨、債券、金利などが、誰かが発行したり、誰かが管理したりしているに対し、暗号資産と貴金属は比較的、独立して存在できる資産であるためです。
9月は、無国籍資産、とりわけ、イーサリアムと銀の下落が目立った、と言えます。
相関係数:イーサリアムは、貴金属、原油、天然ゴムと、比較的強い相関関係にあった
相関係数は、2つの対象物の関係性を数値化したもので、+1と-1の間で決まります。+1に近ければ、2つの対象物の関係は正(連動するように動いていること。相関)、-1に近ければ、関係は負(正反対に動いていること。逆相関)、0に近ければ2つの対象物は、関りがないこと(無相関)を意味します。
相関係数の見方は、以下のとおりです。
0~+0.3(-0.3):ほぼ無相関 |
以下は、2020年9月1日から25日の、ビットコイン、イーサリアムと、他の銘柄の相関係数です。
図:ビットコイン、イーサリアムと、各種銘柄の相関係数 (2020年9月1日から25日)
この期間、イーサリアムは、金と銀、原油、天然ゴムと、比較的強い相関関係にありました。イーサリアムとこれらの相関係数は、強い相関があることを示す、+0.7を超える高い値でした。イーサリアム、金、銀は、無国籍資産の中でも、無国籍通貨という同じカテゴリの銘柄であるため、比較的、値動きが似ることがあります。
しかし、イーサリアムは、原油、天然ゴムと異なり、資源や一次産品ではありません。このため、金と銀のように、同じカテゴリであるために、価格の推移が似通った、という説明は難しいと思います。
イーサリアムと、天然ゴムと原油の相関係数が比較的高かった点については、“幅広い市場の価格動向における、大きな流れ”を意識することで説明できると、筆者は考えています。
例えば9月1~25日の期間、序盤にアップルなど米国のハイテク株が急落し、後半に、そのハイテク株は反発しました。ハイテク株の急落と反発は、それらを構成銘柄の一部とした米国の主要株価指数(例えば、NYダウやS&P500、ナスダックなど)の急落・反発の要因になります。
そして、米国の主要株価指数の動向は、世界全体の景気動向の今後の見通しを左右する要因になり得ます。この一連の流れは“幅広い市場の価格動向における、大きな流れ”を作る源泉と言えます。
世界全体の景気動向の今後の見通しに変化が生じれば、景気動向に反応する傾向がある原油や天然ゴムの価格も、影響を受けることがあります。ハイテク株の急落・反発は、間接的に、原油や天然ゴムの価格に影響を与えるわけです。
9月上旬に起きたハイテク株の急落の際、実は、無国籍通貨であるビットコインと金も下落していました。資金の逃避先とならず、リスク資産と同様に、無国籍資産が売られたことを考えれば、9月上旬は、幅広い市場で、今年2月から3月にかけて発生した“新型コロナショック”のような、資産の現金化(リスク資産を売却してドルを保有する動き、ミニショック)が、一時的に発生したと言えます。
全体的には、9月上旬にハイテク株の下落をきっかけに幅広い市場が売られ、その後9月下旬にハイテク株の反発によって、上旬に下落した銘柄が回復した、という流れです。この流れの中には、イーサリアムも、天然ゴムも、原油もあり、結果として、イーサリアムとこれらの相関係数が高まったと、考えられます。
つまり、イーサリアムと、原油、天然ゴムの相関関係が強まったのは、“幅広い市場の価格動向における、大きな流れ”という共通の材料が強く影響を及ぼしたため、と言えると思います。共通の材料を介して相関関係が強まる、疑似相関の一種だったと言えるでしょう。このような動きは、9月だけでなく、今年に入ってからも、しばしば、見られています。
図:イーサリアムと天然ゴムの価格推移 単位:円(天然ゴムは1キログラムあたり)
価格推移:新型コロナショックから続いた上昇は一服。長期的にはまだトレンド維持か
以下のとおり、ビットコイン、イーサリアムでみられた、新型コロナショック後に起きた価格上昇は、9月上旬で一服したように見えます。
図:ビットコインとイーサリアムの価格推移 単位:円
先述のとおり、9月上旬、ハイテク株が急落したことを機に起きたミニショックで、イーサリアムは下落、同じ暗号資産で、同カテゴリのメイン銘柄のビットコインも下落しました。9月25日時点で、ビットコイン価格は約112万円、イーサリアム価格は約3万6,000円です。
今後の動向を考える上でのポイントは、引き続き、暗号資産と貴金属などの“無国籍資産”が買われるかどうか、だと、筆者は考えています。無国籍資産が買われる条件は、さまざまなものがありますが、
(1)無国籍資産以外の資産を保有する妙味が低下し、相対的に無国籍資産を保有する妙味が増す
(2)無国籍かどうかを問わず、幅広いジャンルの資産は買われる
などのパターンがあります。
(1)については、相対的な話で、無国籍資産以外の資産を保有する妙味が低下する時、例えば、ドル安や株安が目立つ時です。このような状況は、世界の基軸通貨であるドルや、金融商品の王道である株など、何か、誰かに依存する金融商品を保有する妙味が低下している状態です。超低金利や株安が長期間継続する、あるいは今後それらが継続することが濃厚になった状態です。
(2)については、幅広いジャンルの資産が買われる状態の中で、その中の一つである無国籍資産も買われる、パターンです。新型コロナショックから各種市場が回復していった、今年4月から6月ごろがおおむねそれにあたります。
(1)や(2)のケースは、比較的、無国籍資産は買われやすくなると、考えられます。もちろん、無国籍資産以外が買われ、相対的に無国籍資産が売られることもありますし(1の逆)、幅広い市場が強い悲観的なムードで覆われる“総売り”が起きることもあります(2の逆)。
トピック:ビットコイン先物の取組高と価格の連動性に注目
以下より、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)で売買されているビットコイン先物の取組高と価格に注目します。
図:CMEビットコイン先物の取組高と価格
前回述べたとおり、取組高とは、“市場に流入している資金の規模”と言い換えられます。上図のとおり、CMEのビットコイン先物においては、その取組高と価格に、一定程度、連動性が認められます。
どちらが先か、つまり、どちらが原因でどちらが結果なのかについては、議論の余地はありますが、連動性があるということは、疑似相関でないことを前提にすれば、2つは強く関わり合っていると、言えます。
資金流入が原因で価格が結果なのであれば、資金が流入(流出)することで価格が上昇(下落)し、価格が原因で資金流入が結果なのであれば、価格が上昇(下降)すれば資金が流入(流出)する、となります。
この点ついて、価格に関する議論でしばしば話題になる“効率的仮説”をもとに考えれば、「価格は、関係者が知り得るすべての情報を反映している(織り込んでいる)」ことになるため、資金流入(流出)という事実を織り込んで、価格ができている、つまり、資金流入(流出)が原因で、価格は結果、となります。
では、どのようなタイミングで、ビットコイン先物に、より多くの資金が流入する(同先物の取組高がより増えやすくなる)のでしょうか。先述の“②無国籍かどうかを問わず、幅広いジャンルの資産は買われる”、のパターンだと、筆者は考えています。
何かの代わりに相対的に買われる時よりも、幅広いジャンルの市場が総じて買われる、いわゆる“リスク・オン”(投資家がリスクをとって積極的に投資を行うムード)が強まっている時です。今年4月から6月ごろに発生した、株も金も、ビットコインも上昇した、あの状態です。
米国の大規模な金融緩和のはじまりが、その時の“株高・金高・ビットコイン高”のきっかけになったとみられます。向こう数年間、その大規模な金融緩和を継続することを、同策を実施しているFRB(米連邦準備制度理事会)の要人がすでに示していることを考えれば、暗号資産価格は長期的視点において、同資産特有の大きなブレを伴いながらも、水準を切り上がっていくと、筆者は考えています。
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