第1回・大統領候補者TV討論会でトランプ氏は挽回ならず

 9月29日に第1回・大統領候補者TV討論会がオハイオ州クリーブランドで開催されました。トランプ大統領(共和党)とバイデン候補(民主党)は、司会者(FOXニュース)を交えて、新型コロナ対策、経済政策、連邦最高裁判事、人種差別(暴力)問題、選挙の公平性などについて直接対決しました。

 印象として、トランプ氏が司会者の制止を無視しながらバイデン氏の発言を遮る場面が多く、「あなたの息子(ハンター・バイデン氏)がロシアから巨額の資金を得たことを説明せよ」と問い詰めたり、バイデン氏を「社会主義者だ」と決めつけるなどし、相手を追い込む姿勢を強くし過ぎたあまり、公平で実のある議論が展開されたとは言えない結果でした。一方、(想定されていた以上に)バイデン氏は笑顔を交えて冷静に対応。トランプ氏の言動にやや「焦り」がみられたこともあり、相対的にバイデン陣営が無難かつ優勢に討論会を消化した感があります。

 図表2でみるとおり、TV討論会の直後に「トランプ当選予想」は一段と低下した(バイデンの当選予想が上昇した)ことがわかります(30日)。 

<図表2>TV討論会後、トランプ当選予想は一段と下落

出所:Real Clear Politicsより楽天証券経済研究所作成(2020年4月初~9月30日)

 市場参加者は、バイデン民主党候補の経済政策が「大きな政府」、「増税」、「規制強化」を志向していることを警戒しています。

 図表3は、トランプ大統領(共和党)とバイデン候補(民主党)の方針や政権公約に関する概略を比較一覧にしたものです。バイデン氏は、「10年間で約4兆ドル規模の増税を実施する」との方針を示しています。法人税率を平均7ポイント(21%→28%)引き上げ、所得税最高税率を引き上げる(37%→39.6%)方針です。

 ただ、歳入拡大を財源にして「10年間で約7兆ドル規模の歳出増加を実施する」と述べ、インフラ関連(高速道路、鉄道、通信網)やグリーンテクノロジー(電気自動車の普及と支援)の推進に向けた支出の拡大と雇用の増加も計画しています。

 また、第1回TV討論会で「米国の製造業雇用を拡大させる」とも明言。金融業界の一部では「コロナ禍が終息し米景気が回復するまで増税は実施しない(できない)」、「企業や高所得者に対する増税よりも歳出の拡大が景気と業績の浮揚にプラス」との冷静な見方も出始めています。

<図表3>トランプ氏とバイデン氏の政策比較(予想)

出所:各種の情報や報道より楽天証券経済研究所作成(2020年9月末時点)