お金と投資をもっと身近に
facebook twitter
生産の4割!原油価格を動かす「OPEC」の舞台裏とは?
吉田 哲
週刊コモディティマーケット
コモディティ(商品)をお取引いただく上でのコメント・アイディアを提供するレポートです。金をはじめとした貴金属、原油をはじめとしたエネルギー関連銘柄、とうもろこし・大豆などの穀物な…

生産の4割!原油価格を動かす「OPEC」の舞台裏とは?

2017/10/6
・OPECは石油を輸出する14カ国で構成されている。世界の生産シェアは約42%。
・OPECは現在減産に取り組んでいるが、減産を守らない国があるため、目標とする水準まで生産量を減らすことができていない。
・来月末のOPEC総会で減産強化が決議されれば、原油価格が一時的に上昇すると考えられるが、減産が守られる可能性は低い。“決めても守れないOPEC”が露呈されれば、失望売りを誘うことになる。
facebook twitter メールで送る 印刷

●OPECは石油を輸出する14カ国で構成されている。世界の生産シェアは約42%。

●OPECは現在減産に取り組んでいるが、減産を守らない国があるため、目標とする水準まで生産量を減らすことができていない。

●来月末のOPEC総会で減産強化が決議されれば、原油価格が一時的に上昇すると考えられるが、減産が守られる可能性は低い。“決めても守れないOPEC”が露呈されれば、失望売りを誘うことになる。

 

OPECは石油を輸出する14カ国で構成されている。世界の生産シェアは約42%

 現在、OPEC(石油輸出国機構)加盟国14カ国と非OPEC10カ国の合計24カ国は、自らの生産量に上限を決め、供給量を制限する「減産」に取り組んでいます。OPECは減産の目的を記録的に積み上がった世界の石油在庫を減少させること、世界の石油供給を安定化させることとしています。

 以下は、2004年以降の目標とする生産量の上限と対象国の原油生産量の推移です。

図:OPECの目標とする生産量の上限と対象加盟国の原油生産量の推移

単位:千バレル/日量
出所:OPEC、CMEのデータをもとに筆者作成

 上のグラフで(1)から(9)まで番号をつけた期間で起こっていたことを以下に説明します。

(1)原油価格等、諸情勢を鑑み、頻繁に目標とする生産量の上限が変更された。

(2)対象加盟国数の増加(アンゴラとエクアドル)に伴い、上限目標が引き上げられた。

(3)金融危機後の需要低下や在庫増加を想定して減産(上限目標の引き下げ)が決定、実施された。

(4)生産量が上限目標を上回るも、目標とする生産量の上限は変更されなかった。

(5)対象加盟国数の増加(イラク)、リビアの増産を想定し、上限目標が引き上げられた。

(6)生産量が上限目標を下回った。

(7)原油価格が急落しても、上限目標の調整が行われなかった。生産量は大きく増加した。

(8)目標とする生産量の上限の設定自体、行われなかった。

(9)記録的な水準に達した生産に上限を設定し、原油価格を上向かせるために減産が実施された。

 2004年から現在まで、減産が守られた(原油生産量が目標とする生産量の上限を下回った)ケースはほとんどありません。

 また、大義名分である「世界の需給の安定化」を目的としたOPECの増減産は実際には(2)の期間以降、ほとんど行われていないと考えられます。

 2007年半ば以降、増産(目標とする生産量の上限の引き上げ)が2度(2)と(5)、減産(目標とする生産量の上限の引き下げ)が2度(3)と(9)行われていますが、この中の2度の増産は対象となる加盟国が増えたことや一部の加盟国の今後の増産を考慮することを主な理由として行われました。

 (9)の減産についても原油価格の低迷が産油国である加盟国の財政を大幅に悪化させたことを受け、記録的な水準に達した原油生産に上限を設定し、世界の原油生産量を減少させ、原油価格が上昇することを期待して行われた面が強いと考えられます。

 また、(1)の時期は、OPECは比較的増減産の施策を発表する際、同時に原油価格の目標を公表していました。OPECは増減産によって原油価格を動かす意図を持っていたことになります(石油カルテルと呼ばれたのもこの点に理由があると見られます)。減産は生産量を減らし供給逼迫感を作り原油価格を上昇に、逆に増産は生産量を増やし供給過剰感を作り原油価格を下落に導くという考え方です。

 しかし、原油価格が100ドルを超えて“OPECにとって居心地の良い価格帯”と言われた(4)から(6)の期間になると、(5)の加盟国の増加に伴う枠の上昇を除けば増減産が全く行われませんでした。増減産によって価格をコントロールする必要がなかったことが要因です。世界の原油需給の安定化を謳いながらも、OPECは世界の需給よりも原油価格(自国の利益)を優先したことが伺えます。

 

OPECは現在減産に取り組んでいるが、減産を守らない国があるため、目標とする水準まで生産量を減らすことができていない

 現在行われている減産については以下のとおりです。

・参加国:OPEC14カ国、非OPEC10カ国(ロシア等)の合計24カ国

 合意当時(2016年11月)はOPECが13カ国、非OPECが11カ国

2017年7月に赤道ギニアが非OPECからOPECに移動

・期間:2017年1月から2018年3月まで

合意当時は2017年6月までだったが、5月の総会で延長が決定

・実施内容:24か国合計で2016年10月比、日量約180万バレルの生産を減らす。

 そのうち、OPECは日量約120万バレル、非OPECは約60万バレル

OPECは目標とする生産量の上限を日量3,250万バレルとする。

・状況:OPECの生産量は、6月以降3カ月連続で日量3,250万バレルを上回っている。

 また、以下は減産が始まってからその進捗を監視する目的で立てられた委員会が公表している減産順守率(※)の推移です。2016年11月(非OPECは12月)に合意した生産量の上限を守っているかどうかを示す数値です。

※減産順守率・・・生産量を減らすとした量(OPECであれば10月比、日量120万バレル)に対して、どれだけ達成できているかを示す値。例えば、100万バレル生産量を減らすとした場合、100万バレル減少できれば減産順守率は100%(目標達成・減産順守)。80万バレルの減少であれば80%(目標達成できず)、120万バレルであれば120%(目標以上に生産量を減らすことができた)となります。

図:減産順守率

出所:OPECのデータより筆者作成

 

 減産開始直後は順守できていない状況でしたが、4月・5月は100%を超え、順守状態になりました。しかし、6月・7月に100%を割れました。8月は再び100%を超えています。

 このデータは減産を監視する委員会が公表した会合の記録から抜粋したものですが、どのデータもOPECと非OPECを合算した順守率であり、OPECのみあるいは非OPECのみの順守率のデータは確認できませんでした。

 以下のOPECと非OPECそれぞれの生産量のグラフから考えらえることは、2017年1月の減産開始後4か月間はOPECが、5か月目以降は非OPECが生産量を減らし、減産をリードしたことがわかります。

 OPECの生産量については、2016年11月のOPEC総会で合意した目標とする生産量の上限である日量3,250万バレルを、6月以降、3か月連続で上回っています。

図:OPECの原油生産量 単位:千バレル/日量

出所:OPECのデータをもとに筆者作成

 OPECとは逆に、非OPECは8月が減産開始以降、最も生産量が少なくなりました。

図:非OPECの石油生産量 単位:千バレル/日量

出所:米エネルギー省のデータをもとに筆者推計

 OPECのリーダーであるサウジアラビアの原油生産量は以下のとおりです。

図:サウジアラビアの原油生産量 単位:千バレル/日量

出所:OPECのデータをもとに筆者作成

 2016年11月に合意した目標とする生産量の上限を下回る生産を続けていますが、余裕がなく、すぐにでも上限を上回りそうな生産が続いています。

図:ロシアの石油生産量 単位:千バレル/日量

出所:OPECのデータをもとに筆者作成

 ロシアの生産量については、ここ数年間、夏ごろにその年の生産の底となる傾向があるため、季節的に今後は生産量が増加する可能性があります。

 全体的にはOPECの生産量は増加傾向であり、OPEC単体でみれば順守率は100%を下回っていると考えられます。OPECの生産量が目標とする生産量の上限を超えた分を、ロシアを中心とした非OPECの減産分が相殺している状況とみられます。

 

来月末のOPEC総会で減産強化が決議されれば、原油価格が一時的に上昇すると考えられるが、減産が守られる可能性は低い。“決めても守れないOPEC”が露呈されれば、失望売りを誘うことになる

 現在行われている減産の期限は2018年3月です。足元では減産を強化させる策として減産の期限を延長させる案が浮上しています。期間の延長の他、生産枠の上限を引き下げたり、現在の24カ国以外に減産に参加する国を増やしたりするなどの強化策の実施が決定されれば、原油市場にとっては上昇要因となります。

 しかし、「減産の強化」は、減産を実施する国の負担を増やします。現在のように、減産を実施しているものの、原油価格が思ったように上昇しない場合、単純に減産を強化した分だけ減産国の負担が大きくなることになります。

 OPECが単体で減産を守れていない中、生産枠をさらに引き下げることはできるのか?仮に期間の延長はできたとしても、順守できなかった場合、順守できなかったことを公表し続ける期間が延長されることになり、減産の強化がかえってOPECが市場の信頼を失う機会となる可能性があります。

 米国の原油生産量の増加や同国の原油在庫が引き続き高水準であることが、足元の原油価格が(OPECと非OPECが減産をしているにも関わらず)明確な上昇傾向にならない理由であると考えられますが、あくまでもそれは理由の一つであり、むしろOPEC自身が原油価格が上値を追いにくくする理由を作っている可能性があることへの考慮も必要であると筆者は考えています。

 来月30日(木)に、ウィーンでOPEC総会が開催されます。昨年の11月の総会では8年ぶりの減産合意ということで大きな話題になりましたが、その後、ここまでの原油価格の推移や減産の進捗状況を考えれば、米国の原油の増産の件を考慮したとしても、決して期待された結果(原油価格の上昇)が得られているとは考えにくいと思います。

 また、需要の拡大に期待する話もありますが、需要は長期的に増加傾向であり、その傾向を上回るサプライズ感のある需要増にならなければ需要の増加が原油価格の上昇に大きく寄与することは考えにくいと思います。

 果たしてOPECは次にどのような手を打ってくるのでしょうか。大きな関心が集まります。

 感覚的には日量3,000万バレルを上限とし、定められた期間、その上限を順守し続けるくらいの大規模な減産(決定と実施)でなければ、記録的に積み上がった世界の石油在庫の低下と大幅な原油価格の上昇を実現させることは難しいと思います。

 冒頭の「2004年以降の目標とする生産量の上限と対象国の原油生産量の推移」の箇所で述べた期間(3)のように、OPECは本来の増減産の大義名分である「世界の石油需給の安定化」(当時は金融危機のため世界の石油需要が減退するシナリオに基づく減産)にのっとり、今度(こそ)は積み上がった石油在庫を削除するという強い使命感に基づき、ドラスティックな決定と実施が行われることを期待します。

【この記事に対するアンケート回答はこちらから】

トウシルのオススメ記事

▲トウシルトップページへ

 

投資の失敗
老後破綻
はじめよう株主優待
桐谷広人

 

このレポートについてご意見・ご感想をお聞かせください生産の4割!原油価格を動かす「OPEC」の舞台裏とは?

本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。

記事についてのアンケート回答確認

生産の4割!原油価格を動かす「OPEC」の舞台裏とは?

今回のレポートはいかがでしたか?
コメント
投資の失敗
 
ボーナス投資  
桐谷広人
株主優待
 
老後破綻  
動画でわかる

 
NISA
 
楽天証券夏ボーナス
メールマガジン

直近1日の記事を配信します

配信:平日毎営業日配信
祝日・GW・夏季/冬季休暇 を除く

公式SNS

タイムリーな情報を
ゲットできます

配信:記事配信時 随時
facebookおよびTwitterには一部配信しない記事もあります

TOP
×
トウシル メールマガジン および SNSについて
メールマガジン 申込み

トウシルメールマガジンではレポートやコンテンツ等、直近1日の記事をお知らせします。
本メールは配信希望のお客様に平日毎日お届けしております。
リアルタイムでの情報取得は、公式SNS(facebook、twitter)もあわせてご利用ください。

  • 「メールマガジン 選択/受付」画面から購読を選択できます。
  • 楽天証券のメルマガをすでに配信希望にされている方は、
    初期設定としては購読申し込みとなっている場合があります。
  • メールマガジン購読申し込みには、楽天証券会員登録(口座開設)が必要となります。
Gmailサービスをご利用の方へ
メールマガジンを受信時正しく表示されないことがございます。あらかじめご了承ください。
メールマガジン サンプル
メールマガジンサンプル
  • 「メールマガジン 選択/受付」画面から購読を選択できます。
  • 楽天証券のメルマガをすでに配信希望にされている方は、
    初期設定としては購読申し込みとなっている場合があります。
  • メールマガジン購読申し込みには、楽天証券会員登録(口座開設)が必要となります。
Gmailサービスをご利用の方へ
メールマガジンを受信時正しく表示されないことがございます。あらかじめご了承ください。