米大統領選、どちらが勝利しても、大規模な金融緩和というコロナ対策は継続

 感染拡大防止策は、強化と緩和が繰り返されることが常態化する可能性があると述べました。防止策の強化がもたらす各種市場へのマイナスのインパクトは、長期化しないのではないか、ということです。

 では、長期的に留意すべき材料には、どのようなものがあるのでしょうか。それは、5つのテーマの中の“代替通貨”に関わる、米国の大規模な金融緩和策が長期化することが既定路線になりつつある点です。

 新型コロナの感染拡大により甚大なダメージを受けた経済を立て直すため、今後、各機関が力を尽くさなければなりません。米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)もその1つです。すでに彼らは、状況を彼らなりに分析をし、彼らができる施策として、資産の買い入れや低金利策などの金融緩和を実施しています。

 資産の買い入れは、市中に資金を供給すること、低金利策は個人や企業が資金調達をしやすくすることなどを、目的としています。中央銀行による金融緩和策は、金融政策の面から講じられる、大規模で長期的な、経済の立て直し策と言えます。

 すでにFRBは大規模な資産の買い入れを当面継続すること、そして事実上、ゼロ金利を数年先まで継続することを明言しています。それだけ彼らは、新型コロナ起因のダメージが甚大であると認識しているわけです。

 また、物価や雇用の安定を目指す中央銀行は、独立的な立場を保つことを基本としています。その意味では、11月の米大統領選挙の結果によって、FRBの方針が180度方向転換するとは考えにくいでしょう。どちらが当選しても、金融政策の面からのコロナ対策が必要な状況が、当面続く可能性があるためです。

 以下の図のとおり、新型コロナを起点とした大規模な金融緩和は、金相場にとって、“代替通貨”、そして金融緩和時に株価が実態を伴わずに上昇した場合は“代替資産”の側面から、上昇要因になると考えられます。

図:金融緩和が株式・金相場に与える影響(イメージ)

出所:筆者作成

 米国の金融緩和が長期化することは、上記のような図式が長期化する可能性を高めると、筆者は考えています。FRBが、米国経済はコロナのダメージから回復した、と認識するまで、金融緩和が株式相場と金相場を支え続けると考えられます。

 足元、金価格を下落させた一時的な“対ユーロのドル高”は、5つのテーマの一つ“代替通貨”に関わる材料でしたが、長期的に金価格を支えるとみられる金融緩和もまた、“代替通貨”に関わる材料であるわけです。