Q1:あなたにとってインデックス投資とは何か?

 私にとってインデックス投資とは、株式投資にあって「ローコストな分散投資の手段」ということに尽きる。インデックス・ファンドはアクティブ・ファンドよりも、運用報酬と(投資信託の場合、信託報酬)売買手数料が安いことが多く、この点がインデックス・ファンドの最大の魅力だ。これは、投資する主体が個人であっても年金基金のような機関投資家であっても変わらない(注:筆者は、国家公務員共済組合連合会の運用委員会の委員を務めている)。

 インデックス・ファンドに運用結果が勝るアクティブ・ファンドを「事前に」選ぶことができず、インデックス・ファンドの方がローコストである以上、論理的には、アクティブ・ファンドを買う理由は、非合理的な好き嫌い以外にない。

 インデックス・ファンドがリテール金融機関で売られている投資信託なのか変額保険なのか、ETF(上場投資信託)なのかということについては、本質的な違いがあるとは思っていない。リテールの投資信託は小口で売買できることが便利だが、今のところETFよりも傾向として信託報酬が高いのが難点だ。

 一方、ETFは、純資産と売買価格とのかい離、出来高が小さい場合の売買の流動性の乏しさや上場廃止リスクといった、ファンドによっては難点になりやすい要素を持っているが、残高・売買が十分大きくなったファンドにおいてはこうした問題が実質的にほとんどないので、これを資産形成のための投資手段として有効に使うことができる。

 ETFの場合、信託報酬が安いことが圧倒的な魅力であり、現在、インデックス・ファンドに投資する場合の、第一の選択肢だろう。ただし、ETFが、個別の上場株式のように、信用買いや空売りができることについては、インデックスに関して先物やオプションがあるので興味がない。

 また、リテールの投資信託も、手数料コスト(特に信託報酬)が下がれば、ETFに勝る投資対象になる可能性がある。

 対象とするインデックスのポートフォリオとしての内容には優劣があると考えている。たとえば、ポートフォリオとしての日経平均は、値がさ株のウェイトが過剰に大きく、いわゆるハイテク株の比率も高いため、投資するポートフォリオとして、バランスが取れていない。このため、日本株に投資するのであれば、 TOPIX(東証株価指数)の方が「いいポートフォリオ」だと考えている。米国株のインデックス・ファンドを考える場合も、いわゆるニューヨーク・ダウよりもS&P500の方が「いいポートフォリオ」だろう。

 ただし、TOPIXやS&P500のような時価総額ウエイトのインデックスが「特別にいいポートフォリオ」だとは考えてはいない。古い投資の教科書では、これらを、CAPM(資本資産市場モデル)の「マーケット・ポートフォリオ」であるかのように扱うことがあるが、CAPMのマーケット・ポートフォリオは、全てのリスク資産を時価総額ウエイトで保有するポートフォリオなので、特定の一国の上場銘柄だけのポートフォリオとは別物だ。また、CAPMは、前提条件が現実に成立していない。

 従って、投資対象は、有名な株価指数以外のインデックスやアクティブな株式ポートフォリオであっても構わないと思っている。要は、ポートフォリオとして好ましい性質(十分な分散投資など)を持っていて、ローコストであればいいのだ。投資の目的によっては、TOPIXやS&P500以外の選択肢もあり得るし、カスタマイズされたベンチマークを使う運用の可能性も有望だ。