前回、銀行預金は安全か、リスクについて書きました(前回の記事)。銀行預金が有効かどうかは、資産運用を行うにあたり、投資を行う必要があるかないかを決定する大事な要素です。

 金利が高くて安全であれば、投資をしなくても、長期で「積立貯金」をするだけで資産形成ができるからです。今回も同じテーマで別の視点から書いてみたいと思います。(今回も筆者の私見です。)

そもそも銀行の将来を危ぶむ声が広がっている

 前回、銀行預金の安全性について「平時ならば安全、非常時には安全とは言えない」と書きました。

 しかし、最近は、そもそも銀行自体の将来を危ぶむ声が広がっています。先日、日銀の金融システムレポートで、約6割の地銀が10年後には最終赤字になるとの試算が示されました。その他にも、銀行の将来を懸念する内容の書籍も出版されています。

 銀行自体の将来が危うくなれば、そもそも銀行預金の安全性どころの話ではなくなってしまいます。

なぜ銀行は苦しんでいるのか

 少し前までは、銀行と言えば、安定していて給料が高く、学生の就職人気ランキングの常に上位にあり、エリート企業というイメージでした。

 しかし最近の状況は、日本経済の成長低迷、日銀のマイナス金利政策などで事業環境が厳しくなっています。さらに、IT企業など異業種からの銀行ビジネス参入により競争が激化し、従来の銀行のビジネスモデルでは、収益が稼ぎにくくなっています。銀行の収益は、大まかに分けて、以下の3本柱から構成されますが、いずれも苦戦しています。

(1)貸出業務による収益
 預金として調達したお金を貸し出し、「貸出金利-預金金利」の差が利ざやとして収益になります。しかし、日銀のマイナス金利政策により、貸出金利が低下する一方、預金金利は既にほぼゼロになっているため下げ余地がなく、利ざやが小さくなっています。また日本経済の先行き不透明により、企業も個人もなかなかお金を借りてくれません。貸し出しても、利ざやが小さく、借りてもらえる金額も伸びないため、貸出業務による収益は苦戦しているわけです。

(2)有価証券運用による収益
 預金として調達したお金は、貸出業務に回す以外に、有価証券に投資をすることにも使われています。「えっ、自分の預金が投資されているの?」と驚く方もいらっしゃるかもしれませんが、実際に投資されています。

 投資対象の中心はこれまで日本国債でした。日本国債の金利が預金金利より高かったので、利ざやを稼ぐことができたのです。しかし、日銀のマイナス金利政策により、日本国債も利回りがマイナスに陥っています。

 そこで、銀行は外国の国債や株式等への投資割合を高めた運用にシフトしていますが、為替リスク、海外金利の上昇リスク(外国債券の価格下落リスク)、株式の価格変動リスクなど様々な難題に直面し、有価証券への投資はあまり上手くいっていません。

(3)その他手数料収入
 銀行は、貸出や有価証券投資以外に、手数料を得るビジネスを行っています。その中でも代表的なものが、投資信託や保険商品の販売です。投資信託や保険商品を販売すると、販売や残高管理に伴う手数料が銀行に入ります。しかし、競争の激化により手数料率が下がっており、また金融庁からの指導により以前ほどアグレッシブな営業ができなくなり、その結果、手数料収入は頭打ちになっています。

 以上のように、収益の3本柱がいずれも揺らいでいます。加えて、フィンテック企業が新しい技術を用い、決済サービスなどこれまで銀行の独擅場であった分野にも参入し、銀行のビジネスを奪い始めています。