それ以外に銀行預金が戻ってこないことはある?

 ここまで、インフレ対応とペイオフという観点から検討してきましたが、これ以外に銀行預金が戻ってこないケースは考えられるでしょうか。

 残念ながら、まだあります。それは資産課税です。

 国民が持っている金融資産に対し、何と政府が課税するというものです。ストレートに言いますと、国民の金融資産を政府が没収するということです。

 資産の没収「そんなバカな」と思われるかもしれません。しかし、日本では過去に一度発生しています。それは、第2次世界大戦の敗戦後のことです。財政破綻していた政府は、預金封鎖を行うとともに、預金を含む国民の金融資産に対し、課税を行ったのです。政府の借金を減らすために、政府が国民の財産を没収したのです。

「もう資産の没収なんてない」と言いたいところですが、日本の政府債務がひたすら膨張を続けている現状を考えますと、絶対にないとまでは言い切れないと思います。

先のことは分からない、だからリスク分散が重要

 ここまでの話をまとめますと、いずれの観点から見ても、銀行預金は平時は安全、非常時は安全とは言えないという結論になりました。

 非常時というのは、そう簡単に発生する事象ではありません。しかし、絶対に発生しないとは言えないことも事実です。つまり、銀行預金が安全かどうかは、要は非常時発生の確率の問題といえます。

 先のことは、誰にも分かりません。将来のシナリオを平時が続くと決め打ちするのは、危険です。非常時も起こりうると考えて、行動するべきです。そのためには、金融資産も銀行預金だけに集中せず、投資商品にも分散しておくことが、生活の安全を守ることにつながります。

 この世の中に絶対に安全なものはないということ、預金もその例外ではないことを、ぜひ認識していただきたいと思います。