FRBが平均インフレ目標2%導入を表明

 また8月27日、FRBのパウエル議長は「平均インフレ目標2%の導入」を表明しました。今後、インフレが2%を超えても許容すると発言したことから、ドル/円にとっては金融緩和長期継続の重しが加わったため、じわじわとドル安・円高が進行する地合いとなりそうです。安倍首相の辞任記者会見後、週明け8月31日に日経平均株価は戻りましたが、ドル/円が105円台を彷徨(さまよ)っているのは、そのことを物語っているようです。 

 8月は、米中対立激化、FRBの金融政策の変更、日本の政変などの重大イベントがあったにもかかわらずドル/円が急落しなかったのは、日米とも株式市場が堅調だったことが背景にあります。例えば、S&P500種株価指数は8月に7%上昇し、1986年以来の上昇幅となりました。その要因としては、FRBの金融緩和長期化、経済指標の改善、良好だった4-6月期の米企業決算、新型コロナウイルス感染拡大の鈍化が挙げられます。

 しかし、日米欧とも4-6月期GDP(国内総生産)は実質年率で2桁マイナス成長であり、7-9月期はプラスの反発予想とはいえ、それでも株式市場と実体経済との乖離(かいり)は埋められない状況となっています。

 早晩、実体経済が株式市場に追いつくとの期待が高まっていますが、期待に反して相当時間がかかることが予想されます。そのため、実体経済が追いつくまで株式市場の足踏み状態が続くか、待ち切れずに株式市場が調整するかもしれません。あるいは、FRB頼みの株式市場を懸念しているFRBはゼロ金利長期化を発表したものの、けん制球を投げてくるかもしれません。そういう意味で9月15~16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)は注意が必要かもしれません。