安倍首相辞任で、円高進む

 アベノミクスでは、当初から3つの政策の柱を示していました。毛利元就の教えと言われる「3本の矢」にちなんで、アベノミクスの3本の矢と呼ばれていました。第1の矢は大胆な金融緩和、第2の矢は機動的な財政出動、第3の矢は規制緩和でした。

 この中で、日本の景気回復に一番効果が大きかったのが、金融緩和でした。2013年4月に日本銀行総裁に就任した黒田東彦氏により、異次元金融緩和が実施されました。異次元緩和で円安が進み、円安によって日本経済は立ち直りました。日銀による異次元緩和を、「クロダノミクス」ということもありますが、安倍首相によるバックアップがなければ、これだけ大胆な緩和ができたか、分かりません。

 安倍首相辞任の報道が流れると、黒田日銀総裁による大胆な緩和が続けられなくなる、との思惑が出て、報道が出る直前に1ドル106.70円だった為替レートは、106.20円まで円高が進みました。さらにニューヨーク市場で、1ドル105.35円まで円高が進んでいます。

 黒田日銀総裁の任期は2023年まであること、安倍首相の後任首相がすぐに緩和策の見直しを行うとは考えられないこと、から為替市場の円高は、「過剰反応」と考えます。ただし、FRB(米連邦準備制度理事会)による緩和が長期化する可能性があり、それが、ドル安円高につながっている面もあります。