投資はとっつきにくいと感じる若年層への解決策は?
――では投資が難しいと考えている20~30代、あるいは40代はどうすればいいですか。
野尻 投資が難しいと感じる大きな要因は選択肢が多いことでしょう。
例えば、投資初心者でFX(外国為替証拠金取引)をやさしいと感じる人が多いようですが、これはドル/円を買うか売るという選択肢の少なさからくるもの。投資信託(投信)にしても、株投資にしても選択肢が多く、自分の意思決定が損得に直結するという怖さが投資意欲をしぼませているのだと思います。
そこで投資をためらっている人に投資を始めてもらうためには、誰かが「これにしましょう」と、きっかけを与えて行動を促すナッジ(後押し)がないと難しい。行動経済学的には正しいロジックですが、それは無理強いをしているようなものです。
――どう解決しますか?
野尻 企業型DC(確定拠出年金)やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)は、運用商品の本数が制限されていて選択肢がある程度限られているので入りやすいとは思います。つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)もそうですね。
ただ私は選択肢を限ることが正しいとは思っていません。むしろ本数制限には大反対の立場ですが、投資初心者に対してはある程度絞り込んであげないと答えが出せないというのは、洋の東西を問いません。
そこで私は、投信を選ぶための条件設定については自分で行う、その条件に合った投信を探したら2本だった、5本だったというふうに絞り込まれたというのであれば、問題はありません。そうではなくて、第三者が条件を決めて「投信は○○と○○から選びましょう」と言い、それに従うことは怖いことです。
――その条件設定が初心者には難しいのです。
野尻 そうですね。第1条件は投資期間です。第2条件は投資できる規模です。
この2つを自分で決められれば、それほど難しいことではないと思います。もちろんこの条件で5,000本ある投信の中から1本を選ぶことはできませんが、本数が限られている企業型DC(確定拠出年金)、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)、つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)であれば、長期的に投資できるものがいいとか、自分の資産の中でどれくらいを占める規模(元手)になるのかがはっきりしていれば、後は専門家がそれを具現化する条件を決めることができます。そうやって、まずは投資の世界に一歩を踏み出してください。
――老後の備えにはいろいろな方法があること、30代であればまず年収の1倍の資産づくりを目指すこと、投信の場合、iDeCoやつみたてNISAを使えば投資の第一歩が踏み出しやすいことが理解できました。ありがとうございます。
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野尻哲史(のじり・さとし)氏
フィデリティ退職・投資教育研究所所長。
1959年生まれ。1982年一橋大学卒業。山一証券経済研究所、メリルリンチ証券会社などを経て、2007年から現職。10年以上にわたり、個人投資家の資産運用、特に老後資金に関するアドバイスを続ける。『退職金は何もしないと消えていく』『なぜ女性は老後資金を準備できないか』『老後難民』『定年後のお金』など著書多数。